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Episode.11 お洒落は自由に楽しく!


近藤 由香

H.P.DECO 好奇心の小部屋 横浜店 店長
   


 

アール・ヌーヴォーとリンクする作品


私はアッシュ・ペー・フランスに入社する以前の20代の頃から、いちファンとしてお店をチェックしていました。ファースト・アッシュペーはJACQUES LE CORRE(ジャック・ル・コー)のリスボン。前職でバッグの企画に携わった経験から生産背景が想像できることもあり、「こんな素晴らしいバッグを扱っている会社があるのか」と衝撃を受けました。当時は、何か格好良いものを探したいという時には、いつもアッシュ・ペー・フランスのお店を訪れていました。その後、友人の紹介をきっかけに入社してから15年以上経った今でも、一つ一つじっくり語りたくなるような面白い作品と日々出会っています。

 GEM KINGDOMのアクセサリーコレクション(全て本人私物) コレクション総数が最も多いブランド。シルバーアクセサリーは男性的なデザインが多い印象ですが、GEM KINGDOMは女性らしさも兼ね備えているところに惹かれました。
(右手)ブレスレット・リング 人差し指・中指 GEM KINGDOM / 薬指 IOSSELLANI (左手)リング 人差し指 DORETTE / 中指・小指 Indra Man Snuwar(全て本人私物)


数あるブランドの中でも私が特に惹かれるのが、アール・ヌーヴォー時代を想起させる作品です。19世紀から20世紀へと移りゆく中で、昔から受け継がれたテクニックに新しさを取り入れているもの。例えばGEM KINGDOM(ジェム・キングダム)のアクセサリーは、伝統的なデザインの中にアート性やモダンなテイストを加えていて、その凝った細工には建造物に近い緻密さを感じます。
(右手)大バングル・ブレスレット・リング 中指・薬指 GEM KINGDOM / バングル・リング 親指・人差し指 IOSSELLANI (左手)リング 人差し指 IOSSELLIANI / 中指・小指 Indra Man Snuwar(全て本人私物)
自分の好みは美しくて大ぶりなアクセサリー。基本的に一点にどれだけ存在感があって語れるかに注目して選んでいます。身に付けるのはどれも強いものばかりで、全員主役級のアベンジャーズのようですね(笑)。

四代続く老舗の帽子ブランドであるMUHLBAUER(ミュールバウアー)も、アール・ヌーヴォーと通ずるものを感じます。品質の高さはもちろんのこと、職人の手により一点ずつハンドメイドで制作する工程を大切にしつつ、日常に馴染むようなモダンさも兼ね備えたデザイン。こだわりのフォルムは、本体からツバの部分に至るまで一本の滑らかなラインが引かれ、初めて見た時は「こんな美しい帽子があるのだろうか」と驚きました。

 MUHLBAUERの秋冬帽子コレクション(全て本人私物)
縫い目が見えず、まるで一枚の生地で作られたような滑らかな曲線が特徴のMUHLBAUER。自分のコレクションも、そのフォルムに惹かれて選んだものが多いです。


 

作り手の熱量とパーツへのこだわり


作品のディテールに注目すると、一つ一つのパーツにまでこだわっているものには、より作り手の強い熱量を感じます。トレンドに左右されず確固たる信念が根底にあるので、10年前の作品であっても新しい作品と馴染むところが面白い。そういうものほど使い込むだけ味が出て、いつの間にかアンティークのような風合いになります。そして、身に付けなくても壁に掛ればアートの代わりにもなり、インテリアとしての役目も果たしてくれます。まさにアンティーク家具と通ずる魅力があります。

 ハット MUHLBAUER / ジャケット ASKCOUTURE / ネックレス GEM KINGDOM・8エイト(全て本人私物)
アクセサリーを主役に白を基調としたコーディネートで、異素材の表情を出してみました。必ず一つはヴィンテージのアイテムを取り入れて、綺麗にまとまりすぎないように意識しています。
買い物をする時は、使いやすさや格好良さはもちろん大切ですが、それ以上に細かいパーツやディテールにこだわっているかどうかで、自分の気持ちも変わってきます。ハンドメイドであること、素材や背景…、ちゃんと物語が見える作品は、何年経っても飽きません。
   
私のファースト・アッシュペーでもあるJACQUES LE CORRE(ジャック・ル・コー)は、フォルムやディテールへのこだわりが他に類を見ないブランドです。よく建物に例えますが、どこに柱を立てるかによって頑丈な家が完成するように、構造まで考えられた特別なデザイン。中でも私が一番大好きなリスボンは、正方形とも長方形とも言えない不思議なフォルムも、恐らく数ミリ単位で計算されたもの。
そして、個人的に感動したのは、ジッパーがついていることです。そのジッパー自体も滑りが良く、「片手で開閉が出来る」というシンプルな便利さが、それまでのクラシックなバッグには無かった要素だと感じました。素材自体も毎シーズン意表を突くセレクトで、どれだけ時間をかけて試作品を作るんだろう」と、想像が膨らみます。


JACQUES LE CORREの初代デザイナー、ジャックの来日時にサインしてもらったバッグ。「君、JACQUES LE CORREを沢山持っているんだね」と、声をかけてくれたのを覚えています。
それぞれに異なる表情を持つASTIER de VILLATTE(アスティエ・ド・ヴィラット)の器も、クリエイターの並々ならぬこだわりを感じます。ヨーロッパの食器は成形が完璧で、どこか気取ったイメージがありましたが、ASTIER de VILLATTEを初めて目にした時、和食器のような、職人の手の温もりが伝わってきました。
そして、黒土に白い釉薬を塗ることで生まれる、他の陶器には出せない独特な「白さ」。実際に使うと、その白が放つ光が料理に美しく映えることがわかります。器自体に主役級の存在感があるのに、料理を乗せると何故か料理が主役になり、アートフレームのような役割を果たしてくれるのも、計算されたこだわりだと思っています。デザイン自体はヨーロッパの伝統的な壁飾りや額縁がモチーフですが、古い要素と新しいものを上手く融合させているところにアール・ヌーヴォーと通じる世界観を見つけて、ますます好きになりました。

 ASTIER de VILLATTEのセラミックコレクション(全て本人私物)
日常的に愛用しているASTIER de VILLATTE。ただの煮物も、お節料理やクリスマスディナーも何だって映える、飾れて使える万能な器です。
H.P.DECO 好奇心の小部屋 横浜店で長年展開し、私自身もファンのChika Kisada(チカ キサダ)は、舞台衣装も手がける元バレリーナのデザイナーによるブランド。衣装に使用されるチュールやレースを日常的に身に付けられるように作られています。バレリーナを想起させるエレガントなフォルムが特徴で、表情があるデザインは実際に着用した時の動きでさらに美しさが際立ちます。「バレエ」という一貫してブレない世界観と、使った時の美しさが考えられているところには、ASTIER de VILLATTEとも通じるディテールへのこだわりを感じます。


今シーズン購入したChika Kisadaのコレクション(全て本人私物)
全く同じデザインでも、着る人によって異なる雰囲気に。着ていくうちに味が出るブランドです。

お洒落は自由に楽しく!


世の中が変化する中で、最近はファッションにおいても「リラックス」や「癒し」が求められています。シンプルなデザインや保守的なカラーが増えて、以前よりも個性を出しづらい風潮になってきていると感じます。たとえば、その「癒し」が、誰かにとってはワクワクするものや表現したいものだとしたら、恥ずかしがらず、自由に楽しんでいただきたいです。
年齢や世間の意見は関係なく、本当に自分が好きなものを追求する楽しさ。私自身、年齢と共に落ち着くと思っていましたが、むしろ年々パワーアップしている今日この頃(笑)。お買い物をする時は、もちろん作品のストーリーも大切ですが、同じくらい「ワクワクする気持ち」も大切だと思っています。
ASKCOUTUREのオーダー作品(全て本人私物)
何歳になってもおしゃれへの熱意を大切にしたいと、毎年H.P.DECO 好奇心の小部屋 横浜店で開催しているASKCOUTURE(アスクチュール)の企画展。ジャケットやボトムスなど、自分のサイズに合ったパターンとヨーロッパ各国やアメリカのヴィンテージ生地で作るフルオーダーのお洋服です。
ジャケット ASKCOUTURE / ドレス chika kisada / バッグ JACQUES LE CORRE / ハット MUHLBAUER(全て本人私物)
ASKCOUTUREジャケットは、フランスの生地にアンティークのレースやリボンで装飾をリクエスト。アッシュ・ペー・フランスのアクセサリーにも負けない強い存在感で、コーディネートの相性が良いです。
ファッションには、自分の想像を形にする面白さがあります。自店では、「まだまだ自分の感覚やお洒落を楽しみたい」という大人のお客様へ向けた企画を沢山ご用意しているので、ぜひ、そのワクワクを体験しにいらしてください!