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対談 JUANA DE ARCO × D-due
- 人と人を繋ぐものづくり -


ポジティブでキュートな色使いと愛らしい柄が魅力のアルゼンチン発ライフスタイルブランド、JUANA DE ARCO(ホォアナ デ アルコ)。スペイン・ガリシア地方の老舗ドレスメーカーを拠点とするD-due(デ・ドゥエ)。デザイナーの愛すべき家族や友人、仕事仲間への思いやりと愛情に溢れた生産背景を持つ二つのブランドは、どちらも着る人の心に寄り添い、「自分らしさ」を表現するスタイルを提案しています。今回はD-dueとJUANA DE ARCOのディレクターが、二つのブランドに通ずる精神について語りました。


PROFILE

水谷 杏(みずたに あんず) 写真左。2013年入社。JUANA DE ARCOディレクター兼バイヤー。
今井 清貴(いまい きよたか) 写真右。2014年入社。D-dueディレクター兼バイヤー。



革命児であり芸術家 | ラテン諸国に感じるパワー


今井 「意思を持って作られた洋服がある」。それを一番肌で感じたのが、数年前に水谷さんと一緒に出張で南米を訪れた時でした。帰国時の飛行機トラブルにより、急遽乗り継ぎ地点のパリで半日過ごすことになったのですが、奇しくもその時が自分にとっては初訪仏。どこを切り取っても絵になる街並みはまさにファッションと芸術が栄える花の都のイメージを体現し、完成された美しさがありました。ただ、私たちにとっては本場パリよりも、直前に訪れた「南米のパリ」の名で親しまれるブエノスアイレスに惹かれるものがありました。華やかな都市部から少し車を走らせるだけで、風景は廃ビルが並ぶ貧しい街並みに変わり、身近にある貧富の差を目の当たりにして、その中で人々がどう生きていくのかをすごく考えさせられました。

JUANA DE ARCOの本店があるパレルモ地区は、ブエノスアイレスの中でもお洒落なエリアとして知られる。
洗練された建物が並ぶ閑静な街並み。
ブエノスアイレスの中心地から少し郊外へ移動すると、まだ開発途中の風景が広がる。
水谷 アルゼンチンは1990年代の国営企業民営化をきっかけに失業率が社会問題に発展。国民全体の意識としても雇用を創出しようとする動きが強く、そんな革命家の一人がデザイナーのマリアナ・コルテスでした。彼女は2001年にアルゼンチンで経済破綻が起きた時に「Proyectonido(プロジェクト・ニード)」というソーシャル・プロジェクトを設立し、JUANA DE ARCOのアトリエで職人を雇い多くの人々を助けました。そのアトリエは現在まで続き、直近ではコロナ禍に職を失った女性の縫い子さんに縫製の仕事を与える活動もしています。常に身近な人のためにできることを考えて実行する行為は、マリアナにとってごく自然発生的な選択ですが、その意思が洋服にも表れていると思います。

今井 D-dueの拠点であるガリシアは、バルセロナやマドリードのような都市と比較すると同じスペインでもかなり田舎で閉鎖的な街。その昔、パリでオートクチュールが栄えた時代には優秀な職人が沢山育ち服飾産業が栄えましたが、2000年以降は巨大なファストファッション企業が台頭し、ガリシアの老舗ドレスメーカーたちが次々に吸収されている状態です。そんな中でデザイナーのロサリオ・フロハン(通称:チャロ)は、母親が1960年から営むドレスメーカーの高い縫製技術を世界に発信し、その工場で働く人々を救いたいという想いでブランドをスタートました。

縫製工場がベースとなったD-dueのアトリエ。
キリスト教の三大巡礼地の一つ「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」のお膝元として栄えたガリシア。
歴史を感じる石造りの建物も沢山残っている。
水谷 JUANA DE ARCOとD-dueはどちらもデザイナーのベースである故郷、家族、友達を大切に、その人たちと共に生きていくためにものづくりをしているところに揺るぎない意思を感じますね。今でこそ「サステナブル」という言葉が浸透していますが、彼らはずっと前から当たり前のように「サステナブル」な活動を、アーティストとしてクリエイションに取り入れてきた革命児でした。
  
  

ルーツを大切にするFAMILIA(家族)とAMIGO(友人)の精神


今井 チャロは、学生時代に都市でファッションについて勉強した後、ガリシアに戻ってブランドを立ち上げました。理由を聞くと、ガリシアに自分の原点があるから無理して何処かへ行く必要は無く、あるべき姿でものづくりをすることに価値があると話してくれました。

水谷 マリアナはアルゼンチンのみならず南米全体を自分のルーツとして捉えているので、コレクションテーマを探す時は基本的に南米からヒントを得ています。パラグアイの伝統工芸であるニャンドゥティは、現地の伝統工芸品に携わる職人が減少している問題に対し、デザインに落とし込む形で文化の継承を支援してきました。JUANA DE ARCOの生地はアルゼンチン国内もしくは南米で調達していて、生産は本店があるブエノスアイレス周辺に構えた複数のアトリエで行われています。
JUANA DE ARCOのプリント工場。
ボリビア人のプリント職人が作業をしている様子。
パラグアイの伝統工芸「ニャンドゥティ」のコレクションを紹介するデザイナー・マリアナ。

今井 D-dueは基本的に全てガリシアの工場で生産していますが、2021年秋冬コレクションでは初めてポルトガル製の手織の生地を取り入れました。ガリシアにとってポルトガルは、スペインの中心部へ行くよりも近い隣国で、パンデミックをきっかけにより身近なところでものづくりを完結し、世の中に発信していきたいという思いが強まったそう。
JUANA DE ARCOもD-dueも、作品に投影している地元の産業や土地の特性、キャラクターが、デザイナー自身が愛するものだからこそより強く訴えかけてきます。語られるストーリーも自分たちのバックグランドに紐づき、全てが「本物」で、よりクリエイションに奥深さを加えています。
D-dueのアトリエで生地を選ぶデザイナーのアルフレド(左)とチャロ(右)。
水谷 生産背景においても完全に目に見える身近な人々で完結できることが、労働力と資源が豊富なラテン諸国の特徴かもしれませんね。低コストを追求して国外に生産を依頼せず、自社の工場を守り、周りの人たちに仕事を渡したいという想いでブランドを作っているから100%クリーンだし、もちろん過度な労働を強いることもありません。

今井 クリエイションを掘り下げていくとそういう背景にたどり着くのが面白いですね。大量生産された洋服では表現できないことだし、そこに価値を感じて洋服を選ぶ行為は、これからの時代にすごく重要になってくると思います。
アッシュ・ペー・フランスは創業当時からクリエイターの意思を感じるクリエイションを買い付けていて、その行為が結果的にクリエイターの活動とその周囲の人々を支えてきました。D-dueも一時期ガリシアでビジネスを続けていくには厳しい局地に立たされ、最後の望みを託して出展した日本の合同展示会「rooms(ルームス)」でアッシュ・ペー・フランスと出会ったことから新たな販路が生まれ、ブランドを継続できたそうです。
D-dueのアトリエ内にはガリシアの工芸品が至る所に飾られている。
水谷 JUANA DE ARCOは日本のお客様に向けて商品を届けるにあたり、アッシュ・ペー・フランスが厳しく縫製のチェックや品質管理をしたため、「あなた達のお陰でブランドとしてすごく成長できた」と今でも感謝されます。アッシュ・ペー・フランスが沢山のブランドをサポートし、成長させてきたのだと改めて感じますね。

今井 興味深いのは、彼らは自分たちのスタイルを貫き通し、そこに合うマーケットを探したところ。何かに影響されて変わることのない芯の強さがあるブランドだからこそ、私たちが提案する意味があると思います。
   
   

周りのために、そして自分のために。デザイナーの人柄を映し出す着心地の良い服


水谷 とはいえ、地元の人々を支えている背景を持ちながらも、マリアナが23年前にJUANA DE ARCOを立ち上げた発端はもっとシンプルで、ハッピーな気持ちでした。当時は現在と比較すると女性の自由な生き方や表現の選択肢がまだまだ少なく、ランジェリーは白やベージュなど地味な色ばかり。そこで「女性のためのカラフルで可愛い下着を作りたい!」という気持ちからブランドをスタートしました。彼女のお茶目で優しいキャラクターに人が集まってきて、今日までブランドとして成長してきました。
いつもハッピーオーラを発しているマリアナ。
ブエノスアイレスのJUANA DE ARCOで開催されたキッズ向けイベントに、お客様やマリアナの友人が子供を連れて大勢押し寄せた。中央で写真を撮っているのがマリアナ。
今井 チャロにもそういう人を惹きつける魅力がありますね。以前、ガリシアの街中を一緒に歩いていた時、彼女は沢山声をかけられて、前に一歩も進めないくらい引き止められていました。ロックで派手な風貌ですが、実はすごくシャイで優しい心の持ち主です。
街で子供たちと戯れるチャロ。
水谷 マリアナは、「気分や気持ちに寄り添うランジェリーや洋服で、女性が自分を表現し、ありのままに生きて欲しい」という想いを、JUANA DE ARCOの色や柄で表しました。加えて、リラックスできることも大切な要素で、仕事中も自宅でも、着る人が心地よく過ごすことができるように考えられています。

今井 JUANA DE ARCOと同様にチャロも、着る人がリラックスできるよう、身幅をゆっとりさせて窮屈にならないデザインを提案しています。そして「エイジレス」をコンセプトに、年を重ねる変化も楽しんで長く着られる洋服を意識しているため、着物のように全て肩のラインが落ちるデザインで、どんな体型にも合う形に計算されています。勿論、D-dueの1番の魅力は何と言ってもそういった高い縫製技術を活かした質の良さですが、さらにアルフレドというアーティストがチームに加わったことで、芸術的なコンセプトが洋服に落とし込まれ、その仕上がりはまさに芸術作品だと言えます。
“VISTE TU INTERIOR(内面から輝いて)”というメッセージが込められた、JUANA DE ARCOの色とりどりのランジェリー。
ガリシアの海を背景に撮影したD-dueの2021年秋冬コレクション。エイジレスで長く愛用頂くことをモットーにデザインされている。
水谷 見た目や素材は違うけれど、どちらのブランドも、持っているものづくりのスピリットは共通していて、洋服の相性も良いですね。マリアナのものづくりの特徴として、「あなたはどう思う?」と聞いてくることも多いのですが、そういうやりとりを重ねると、周囲の意見を柔軟に取り入れる、本当に風のように柔らかい人だと切に感じます。

今井 すごい!そこはチャロたちも全く同じですね。着る人の生き方に添った洋服を作りたいという前提があるから、自分のクリエイションを全て押し付けるのではなく、どうしたらより良く伝えられるか真剣に考えているのだと思います。色々なクリエイターと接してきた中でも、D-dueとJUANA DE ARCOは特に他のブランドと違い、揺るぎない軸を持ちつつ人の意見も寛容に取り入れて、より良いものをお客様に提供したいという真摯な姿勢が見えます。

水谷 JUANA DE ARCOの場合はよく、「これはヨガ用ですか?部屋着用ですか?」とお客様から質問をいただくことがありますが、実際は決まっていません(笑)。どう着るかはその人の自由です。着る人によってスタイルも変わりますが、洋服ではなく「人」が主役だからそれで良い。

今井 洋服とは人の内面を表すもの。自分を表現するためには、どんなメッセージを持った洋服を選択するかがすごく重要だと考えます。例えば、メッセージが入ったTシャツはアイコン的に自分を主張しますが、D-dueとJUANA DE ARCOの洋服はある意味、別の切り口で、デザイナーが誰のためにどんな想いで作っているかを伝えています。背景を知ることできっと、もっとその洋服が好きになると思うので、ぜひ沢山のお客様に彼らの想いを受け取っていただけると嬉しいです。

文章:米田沙良(アッシュ・ペー・フランス 広報部)

   
   
   

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