STORE MANAGEMENT STRATEGIST


川端敏広





大学生の頃、芸術論の講義で聞いた、グラフィックデザイナーである味岡伸太郎さんの言葉が今も自分の中に残っています。味岡さんは、「ゴッホは生前のうち作品が売れず、亡くなった後、世界的に評価されるようになった作家。一方、自分の仕事は、書体を少し変えるだけで、5万、10万と価値がつく。クライアントが求めるものを作っているから。」と言いました。ここで湧き上がる疑問は、果たしてゴッホは幸せだったのかということ。もし彼が生前のうちに絵が売れていたら、また別の人生があったのではないか。この時僕は、クリエイターの「やりたいこと」と「売れるもの」というジレンマを感じ、それがビジネスマンとしての原風景となりました。僕は音楽が大好きだったので、バンドを組んで、ニールヤングやボブ・ディランを聴き、月に20本以上の映画を観て、美術館に通うという食事よりも芸術にお金を注ぐ学生時代を過ごしました。今でも季節の変わり目には鎌倉の「もやい工芸」に足を運び、お気に入りの陶器を物色します。ずっと芸術に触れてきたからこそ、クリエイターの“ものづくりの精神”を大切にしたいと感じています。

「ライチ」は、クリエイターからクリエイションを集め、コーディネートで提案するという昔ながらのセレクトショップの形をずっと維持しています。クリエイターがやりたいこと、面白いと感じ作るものは、時として消費者の季節感と合わないことがありますが、そこで他のアイテムと組み合わせ、ライチ流のトータルコーディネートでご提案する。まさにアッシュ・ペー・フランスの“FASHION IS FUN”精神が、脈々と受け継がれています。レディースファッションに携わっていると、女性のファッションに対する間口の広さに驚かされます。ほんの数年前には考えられなかったスタイルが、ちょっとしたことをきっかけに一気に広まり、どんどん自分のスタイルに取り入れていく。そのファッションの幅広さとスピード感にはいつも刺激を受けます。こうして「ライチ」の可能性もどんどん広がっていくことを日々実感します。「ライチ横浜店」はお蔭様で昨年10周年を迎え、今年の9月に「ライチ新宿店」もおなじく10年となります。クリエイションの集積である「ライチ」の魅力を、もっと沢山のお客様にご紹介できるよう、今後も各地に拡大していきたいと思います。