マルト・デムラン 植物のある暮らし



20年間暮らしたパリを離れ、2004年に南フランスのアヴィニョンに拠点を移したマルト。一目惚れしたという緑溢れる庭には、目利きの彼女が各地で買い付けたお気に入りの植物やデコレーションが並ぶ。植物がもたらす豊かな暮らしとは?


人が生きるために不可欠な美味しい空気やエネルギーは、すべて植物や花が与えてくれると思っている。私にとって、生活に植物があることはとても大切で、頭の中を空っぽにしたい時によく庭を散歩するの。都会に住んでいた頃は、忙しくて息が詰まることがあったから、ある日突然人生を変えたいと思い、アヴィニョンへ引っ越した。人は誰でも、時々立ち止まって体や心を休める時間が必要だと感じていて、植物は薬のような癒しのパワーを持っていると思うわ。庭で何も考えず植物の手入れに没頭したり、座って静かに本を読んだりすると、慌しさの中に「バランス」をもたらす平和な時間が訪れる。花を見つめている時は、まるで瞑想するように、全ての動作や考え事を止めて、呼吸する。そして、世界の美しさに気づかされるの。



花は異国の景色や旅で見た昔の記憶を呼び起こす。広いスペースが無くても、部屋の中に一輪の花が飾ってあるだけで、暮らしにポエティックな要素をもたらしてくれるもの。田舎は花屋も簡素で、豪華で凝った作りの花はあまり手に入らないけれど、デイジーのようなシンプルなものだって素敵だと思うわ。朝起きて、キッチンテーブルに置いていた花が、昨日よりも成長している様子を見ると感動するでしょう?植物は、日常生活を少しだけ豊かにしてくれるポエトリー(詩)なの。庭では毎日何か変化が起きている。私はテラスに大きな赤いBACSAC(バックサック)の植木鉢を置いていて、そこでハーブやチェリートマトを育てているの。自分で育てた食材がそのまま食卓に並ぶから、自然そのものの豊かさを味わうことができる。市場で食材を買うのも良いけれど、やっぱり自分で作ったものを食べるのが一番!これが田舎暮らしというものよ。

家の庭

テラスでは大きなBACSACでハーブが育つ

-マルトの庭-


私の庭はイングリッシュガーデンをイメージしていて、緑、白、バーガンディーといった色とりどりの植物、Vincent Verde(ヴィンセント・ヴェルデ)、Fermob(フェルモブ)の家具、モロッコやスペインを旅した時に買ったもの、鏡、植木鉢などのヴィンテージ品が調和して並んでいる。人がブローチやジュエリーを身に付けるように、植物も陶器で装飾するの。このアイデア、とても気に入っているわ。植物は、これまでアテンドした数々のサロンや、日本で買ったもの、ブルターニュにある母の庭から持って来たものなど、様々な場所から集まった。ダイナミックな赤塗のテラスは、友人や家族を招いた夕食会やバーベキューパーティーなど、お祝いの場面で使うことが多いかしら。育てたハーブはそのままテーブルに出して食べることができるから、自然の恵みに感謝の気持ちを持つことの大切さに気付かされるの。

座ると庭全体を見渡せる静かな空間

大きなシダやバーガンディーの多肉植物


赤塗のテラス

Tiznit(ティズニット)のオブジェと植物が調和した窓辺

モロッコ製プレートやVincent Verdeの陶器が集う木陰のテーブル

-お気に入りのフラワーサロン-


毎年、エクス=アン=プロヴァンス近郊のLes Jardins d'Albertras(レジャルダン ダルベルタス)という美しい庭園で開催されるフラワーサロンは、私が植物を買いたい時にいつも夫のフランクと訪れる場所。フランス全土から出展者が集まり、多肉植物、サボテン、シダ、フューシア、オーガニック野菜やハーブ、アロマ、バラなどが豊富に揃っている。フランクはアトリエのために、私は庭とテラスのために植物探しをするけれど、訪れる度に毎回期待を超えるものが手に入るから二人ともすごく楽しんでいるの。もちろん、近所のフラワーマーケットでもっとシンプルな植物を買うこともあるけれど、ここは出展者のレベルも高く、必ず良いものが見つかる。自然を愛し、情熱を持った人と交流ができるし、チャーミングでパーソナル、良質な庭づくりに欠かせない素晴らしい場所よ。
都会のアパートなど、小さな空間で暮らしているとガーデニングをする習慣が薄れがちだけれど、コリアンダー、シブレット(ヨーロッパに自生するねぎの一種でハーブとして扱われている)、ローズマリーや紫蘇などは、場所を取らず簡単に育てることができるからおすすめ。是非、日々の暮らしに植物を取り入れてみて!


-Profile-



Marthe Desmoulins(マルト・デムラン)

「Bazar et Garde-Manger(バザー・エ・ガルド・モンジェ)」のバイヤー兼コンセプター。パリの伝説的なブティック「アブサント」のオーナー兼バイヤーとして活躍したのち、現在はパートナーのフランクとともに南フランスのアヴィニョンで暮らす。