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Episode.13 長く愛されたマイビンテージと暮らす


園部 志帆

アッシュペーブチック 店長
   


 

アンティークを愛でるフランスのインテリア

私は、小さい頃からパリのインテリアや、フランス人のお部屋特集を見るのが好きで、自分の部屋もよく真似してコーディネートしていました。彼らの部屋では、ゴミ捨て場から拾った家具や昔使われていた看板を飾ったり、代々家族から譲り受けたものを大事にしたりと、古いものを自分らしく味付けして生活の中に取り入れています。日本のこぎれいなインテリアとは違う、その温かみのある空間に、漠然と強い憧れを抱くようになりました。
  
H.P.DECOを初めて訪れたのは高校生の時。「フランス」や「インテリア」が大きなキーワードだった私にとって、ずっと一番好きなお店でした。そして、社会人になってから一人でパリを訪れる機会があり、3泊5日の弾丸旅行ではノートにリストアップした蚤の市や雑貨屋を巡り、Tsé&Tsé associées(ツェツェ・アソシエ)の本店にも行きました。当時の私は「四月の花器」と「キュービストガーランドライト」しか知りませんでしたが、本店では他にもユニークな雑貨たちに触れ、まだまだ知らないクリエイションが沢山あるのだと、ますますファンになりました。旅行中は朝から晩まで歩き回っても疲れを忘れるほど楽しくて、フランス人のセンスと古いものを愛でる感覚がやはり好きだと再確認しました。
そして帰国後、フランスやTsé&Tséの商品に携わる仕事がしたいと、思い立ってアッシュ・ペー・フランスに履歴書を送ったのでした。
Tsé&Tsé associées(ツェツェ・アソシエ)のグラスや雑貨のコレクション。
Tsé&Tséの魅力は、デザイナーが「こういうものがあったら楽しい」という純粋な遊び心でデザインしているところ。万人受けよりも、好奇心から生み出された愉快な作品はとてもクリエイティブで、「のどカラカラのグラス」や「なまけものの花器」などユニークな商品名は、まるで友達のようで愛着が湧きます。一番リスペクトしているデザイナーです。

照明や椅子、ファブリック、ソファなど、私の部屋のインテリアの中核を担うのはどれもH.P.DECOで出会ったものばかり。特に、フランス人の男性クリエイターが手掛けるLISDIN(リスディン)のたまご型ランプは、真っ白でシンプルな形ながら、不思議な存在感があってお気に入り。友人たちにも大人気です。
 
シェードランプはアッシュ・ペー・フランスの先輩から「とても愛着があるけど、あなたなら使って欲しい」と譲り受けたもの。誰かが大事にしていたものを貰うことは、新品の贈り物とは意味合いが異なり、マイビンテージとして部屋のセンターに置いています。


 

愛情深くつくられたもの


自分のコレクションに共通するキーワードは、愛情深くつくられたもの、そしてアンティーク要素を感じるもの。アッシュペーブチックがある「海岸ビルヂング」も歴史を感じる建物ですが、普段の生活においても古着を着たり、レトロな喫茶店や古い建築物を訪れたりすることが多く、そのように昔から大切にされてきたものに触れる時間が好きです。
そして、クリエイターの手で大切に形づくられた作品は、制作過程における「とある一瞬」によって異なる表情を見せます。例えば、染め物であればその日の気温や染料の染み具合で柄が変化したり、クリエイター自身にふと起こった偶然が形になったりと、普遍的ではない「とある一瞬」のはかなさに魅力を感じます。
H.P.DECOセレクトのクッションは、植物由来の自然素材で染められた一点物。最近はケミカルで発色が強いものより、心と体どちらにも優しい素材に惹かれます。
購入まで一年ほど吟味したHONORE(オノレ)のソファは、「やっぱりこの子しかいない」と思わせてくれる唯一無二のデザイン。お部屋の顔として置いています。
中央のマグカップはKuhn Keramik(クーン ケラミック)。デザイナー本人が手捻りで形づくった歪(いびつ)なフォルムは、口に付けた時の感覚が毎日違うのものまた面白く、手の温かみが心に入って来る気がします。
ASTIER de VILLATTE(アスティエ・ド・ヴィラット)のセラミックコレクション。
最初に購入した星形のエトワールは飼っている猫が割ってしまいましたが、買い換えるのではなく、金継ぎをして大事に使い続けています。デザイナーのブノワとイヴァンが「静物画に登場するモチーフをイメージして作っている」と言う、魅力溢れる陶器は、テーブルの上にカップを一つ置くだけで空間そのものが絵になります。

蚤の市の魅力


お買い物をする時は「直感型」。金額には関係なく、目が合ってしまったら買わずにはいられないタイプです。好奇心や独占欲が強いので、好きなものは自分の目で見たいし、自分で手に入れたい。「この子は我が家に来たら一番輝ける」と思えたら買います。そういう背景もあって、自分の部屋には一点物や、同じ商品でも一つ一つ形が違うものが沢山集まっているのかもしれません。
海外やH.P.DECOの蚤の市で集めた、一点物やブロカントのコレクション。お気に入りのアンティークのキャビネットに並べて飾っています。
特に、蚤の市に並ぶ商品の中には、ボロボロで使いようがないものも沢山あります。ただ、すごく古くても、誰かが大事にしていたから今まで残っていたのだと思うと、どうしても放っておけなくなります。私自身が色々なことを深く考えるのが好きな性格なので、そのように物語を感じたり、想像力を掻き立てられるものは、探究心をくすぐられて手に入れたくなります。


蚤の市で購入したボロボロのフルーツオブジェや器。左上のピンクと茶色のカップは、どこの国に属しているのかも不明な、不思議な柄に惹かれました。中央の器やハート型の陶器はH.P.DECOで購入したもの。

「好き」を暮らしに取り入れる


小さい頃に抱いていた憧れは、大人になり実際に足を運び、目で見て聞くことで益々膨らんでいきました。そして、アッシュ・ペー・フランスに入社してからは、ずっと大事にされてきたもの買ったり、人から貰ったりして、また愛情を上乗せしていく心地良さと、そういうものと共存する暮らしが自分の中で大きな幸せだということに気づきました。自宅にいる時、ふとした瞬間にお気に入りのアイテムが視界に入ったり、季節や気分に合わせて模様替えをしたり、ずっと自分のものとして愛でていく感覚。「好き」な気持ちは憧れだけで終わらせず、自分自身で形作っていくという意味合いに変化していきました。

 朝の光がとても綺麗で、起き抜けに思わず撮った部屋の風景。自然光が綺麗に差し込む今の部屋がとても気に入っています。
日によって変わるベッドサイドの棚の様子。ASTIER de VILLATTEのお香やキャンドルを置いたり、本を積み上げたり、お花を飾ったり。その日の気分によってデコレーションを変えて楽しみます。
ASTIER de VILLATTEのクリスマスオーナメントは、H.P.DECOアッシュペーブチックで購入。香水瓶や、ガラスの中で水が揺れ動くカクテル、「Je t'aime」とルージュで描かれたミラーなど、どれもジョークが効いていて、心をくすぐられます。
分の家を好きなもので満たすことは、私にとって一番の喜びであり、人生そのもの。今までを振り返ると、自分の時間もお金もそこに使って来ましたが、とても満たされていたし、これからも一生続けたいと思っています。そして、その「好き」と暮らすことへの喜びを、皆さんにも、もっともっと知っていただきたいです!