対談 ようこそ、神戸へ
「東洋一美しい百貨店」を目指す 大丸神戸店


2019年4月26日、神戸に新業態「H.P.FRANCE」が誕生した。
開港以降、独自の文化と伝統を築いてきた神戸の魅力を、
大丸神戸店・冨士ひろ子店長と 、アッシュ・ぺー・フランス代表の村松孝尚が語る。





なぜ神戸は特別なのか?


冨士ひろ子(以下 冨士) 神戸の歴史は、今から約150年前の開港と共に始まりました。以来、映画やサッカー、パーマといった様々な西洋の文化を日本で最初に取り入れた神戸の人々は“進取の気性”をDNAとして受け継いでいます。不思議なことに、トレンドやブランドに左右されず「神戸のフィルター」をかけて良いと思ったものを選び、自分の生活に上手く織り交ぜているのです。また、キリスト教の教会とモスクが隣り合わせだったりと、宗教、生活、文化といったあらゆる事柄を寛容に受け入れてきた背景があります。

村松孝尚(以下 村松) まさに、ダイバーシティの気質ですね。

冨士 そうですね。開港後、日本で刊行された英字新聞『The Far East』では、神戸に建てられた居留地を「世界一美しい街が完成した」と記したそうです。その美しい街並みを、太平洋戦争の大空襲や阪神淡路大震災を乗り越え、150年間守り続けてきたという強い誇りを持っていると感じます。特に震災後は、被災してなお元の姿を取り戻し、さらに美しく佇む居留地や大丸神戸店が、復興のシンボルとして現在まで愛されてきました。

村松 世界中、様々な場所を訪れましたが、街の美しさに限らず、神戸には特別な魅力を感じます。

冨士 たとえば、祖父の代から手袋はきっちりサイズを測ってオーダーすることや、仕立ての良いテイラーを教わるなど、古き良きものを伝え聞くことで、神戸の人々が蓄積してきた審美眼が存在すると思います。

村松 パリで出会ったクリエイターたちも神戸が特別に好きですが、何か通ずるものがあるのでしょうか。

冨士 神戸の人もパリが好きですね。150年前からオープンカフェやデリカテッセンのような西洋の文化が日常に存在していたことや、山や穏やかな瀬戸内といった豊かな自然に囲まれていることも共通していると思います。あとは、パリと神戸どちらも、地元の人の地域愛が強いと感じます。

村松 神戸において、大丸神戸店とはどのような存在ですか?

冨士 大丸神戸店は、地域のお客様に支えられ続いてきました。その中で私たちは、“変えてはならないもの”と“ 進化させるべきもの”という二つの価値をポリシーとして掲げ、特に「神戸のフィルター」をかけることを大切にしています。独自のスタイルを持つ人が多い神戸では、トレンドだけではなく少し違った視点が絶対に必要で、それはまさに、村松さんが以前より仰っている「オルタナティブ(もう一つの)」という価値観でした 。私達が知らなかった価値観をいつも見せてくれるアッシュ・ぺー・フランスのコンセプトと、大丸神戸店が向かう方向性が非常に合うと感じ、ぜひ一緒にお仕事をさせていただきたいと思いました。

村松 ありがとうございます。嬉しいですね。実際、アッ シュ・ぺ ー・フランスが35年前にラフォーレ原宿でお店を始めた時も、別の「何か」を求めて来店されたお客様に 、当時パリから買い付けたJAMIN PUECH(ジャマン・ピュエッシュ)やJACQUES LE CORRE(ジャック ル コー)のバッグを気に入ってもらえて、お買い上げ頂きました。神戸のフィルターが独自のスタイルを築くというお話は、まさにアッシュ・ぺー・フランスと相通ずるものがあり、ワクワクしますね。




共感のコミュニティ


冨士 私がアッ シュ・ぺ ー・フ ランスを意識し始めたのは80年代の終わり頃。クリエイターを発掘する新しいビジネスモデルを確立し、当時からなんて素敵なものの見方をするんだろうと思っていました 。

村松 丁度その頃に僕がパリで出会った、バイヤー Françoise Seigle(フランソワーズ・セーグル)の審美眼が素晴らしかった。当時パリでは素材ではなくクリエイションに価値を置く、オルタナティブなクリエイターが雨後の筍のごとく一気に出現しました。その中心にフランソワーズがいて、彼らを発掘したんです。僕が20代の頃に働いていたカルチャー誌の出版社でもオルタナティブが一つのテーマだったので、自分の中にも、大きな道に対してもう一つの未来を感じる目があり、それが彼女の審美眼と上手く合わさったのかも知れませんね。

冨士 アッシュ・ぺ ー・フランスはスタッフの育成にも力を入れていますよね。私もバイヤーだったので、当時パリで可愛い女の子たちを引き連れたフランソワーズとよく遭遇したのを覚えています。また、お店ではスタッフがいきいきと商品を紹介してくれて、クリエイターのことが本当に大好きなんだ、という想いが伝わってきます。

村松 ありがとうございます。皆にクリエイターのエネルギーが憑依して 、お客様に彼らのストーリーをお伝えする。そして、創造する人、伝える人、それを享受する人というクリエイションを中心とする「共感のコミュニティ」が生まれるんです。

冨士 ちゃんと一本の線で繋がっているんですよね。今は単にファッションを楽しむだけでなく、暮らしの中に豊かさや、アートを感じることがとても大切。そういったより良い社会の実現のために、アッシュ・ぺ ー・フランスがずっと掲げている考え方に共感すると共に、私達もそうありたいと思います。神戸に新たに誕生したお店を通して、一緒に挑戦し、成長していきたいですね。

村松 クリエイションを中心に人が繋がることで、人の心も動かすことができる。独自の審美眼を持った神戸のお客様とコミュニティを築き、私達それぞれが、クリエイターの想いを伝えるストーリーテラーであり続けたいと思います。

【プロフィール】冨士ひろ子(ふじ ひろこ)
1981年に株式会社大丸入社。婦人雑貨バイヤー、同社グループ本社百貨店事業部MD統括本部でマーチャンダイザーを担当。2011年に同社執行役員に就任し、2017年より大丸神戸店長を務める。



H.P.FRANCE
2019.4.26 FRI OPEN

兵庫県神戸市中央区明石町40 大丸神戸店 本館1F 
TEL: 078-599-5188