JACQUES LE CORRE パリ物語Vol.02


JACQUES et MASUMI


1985年、帽子ブランドJACQUES LE CORREはパリに誕生しました。98年からはJacquesとMasumi 二人によるクリエイションが始まります。帽子に加えバッグや靴も加わり、コレクション全てがフランスで作られています。2010年にJacquesはこの世を後にしますが、彼の願ったとおりMasumiによってJACQUES LE CORREコレクションは1度も休むことなく続いています。連載第2回目はポートレイト。天性のクリエイターJacquesが自身のクリエイティヴを刺激するために撮り続けた写真をご覧ください。


JacquesとMasumiふたりでのコレクション制作が一定のリズムを刻むようになった2006年、Jacquesはポートレイトの撮影をはじめます。被写体は個性豊かな友人やクリエイター仲間。
撮影の日、パリに住んでいる人も旅の途中の人もJacquesとメーキャップアーティストに迎えられます。Jacquesが被写体に帽子をかぶせながらイメージを定めると、被写体も含めたそれぞれのクリエイティヴィティが反応をはじめ、その場の空気が変わります。メーキャップによって変化していく被写体をJacquesはじっと見つめ、さらに意向を伝えることもあれば、何もしないと決めることも。ときには即興で、Jacques自身がメーキャップをおこない、そのまま撮影に入ることも珍しいことではありませんでした。撮影は最初の1枚で終わることもありましたが、いつまでも続くこともあり、それでも最高におもしろいと、撮影に立ち会うために友人が来ることも多くあります。

Jacquesは撮影した写真の並ぶベタ焼きから幾つか選んだものをMasumiに見てもらい、写真を決めます。
「どれがいいと思う?」
「Uhmmm, ça. これがいいわ」
「D’accord, Masumi. Tu as raison. そうする。今回もいい撮影だった。インスピレーションが湧いたよ」
「C’est bien. On y va, よかったじゃん。それじゃあコレクションに取り掛かりましょ」

♪ Strange, I’ve seen that face before

Jacques自身のポートレイトは、彼があまりにも撮影に消極的だったため長い間存在しませんでした。2008年、再びJacquesにポートレイトの話が持ち上がり、
「Non, ça non.ポートレイトは無い。何度も言っただろう」
「Oui, je sais. Mais, わかっております、何度も聞きました。でも、どうしても必要だって」

♪ Tu te prends pour qui?
Toi aussi tu détestes la vie

いつもと同じような押し問答が続いた数日後、Masumiが馴染みのカフェでJacquesを待っていると、
「Masumi, これ、どう」
「Eh ! どっかで見たことが… C’est pas mal, Jacques. いいじゃん。」
「Mais, 小さいデータしかないから、大きく出来ない」
「Ah-ha, je vois. ああ、そういうこと」
「Quoi? 何が」
「Rien... Super belle. すっごくいい、このポートレイト。これぞJacquesね」

「Pas mal, non? 悪くないだろ」
2008年ふたりの訪日の話が持ち上がると、Jacquesは舞踏家 大野一雄さんの写真を撮影する機会に恵まれます。撮影当日の早朝、JacquesがMasumiを呼んで、
「Je me sens mal. 具合が良くない。今日の予定は全部キャンセル」
「Ehhh!そんなこと言ったって、今日は大野さんに会いに行くんでしょ」
「Ah, non, impossible. 絶対に無理。今日は外には出ない」
「Depuis quelques années, あんなに会いたがっていたじゃない。もう今しかないって言ったのはJacques、あなたでしょう」
「Je n’y peux rien. 無理」
「T’es sûr? 本当に」
「Bah, oui. 行けない」
「D’accord...Mais, わかった。撮影はしなくていいけど、会いに行くだけは行きましょう。大野さんも待っていらっしゃるから」

♪ Wise men say only fools rush in

数時間後、Masumiは浮かない顔のJacquesをなんとか連れ出し、大野邸へ到着します。ご子息の大野慶人さんと奥様に迎えられ、大野さんのスタジオに通されて、素晴らしい舞台衣装の数々と写真集を見せてもらううちに、Jacquesにフランス語で説明するMasumiの声の調子が少しずつ上がってくると、にわかにJacquesはサングラスを外し、シャッターを切り出します。そうして徐々に調子を戻し始めたJacquesは、Masumiと一緒に満を持して大野さんの撮影に臨みました。

♪ But I can’t help falling in love with you
Like a river flows to the sea
So it goes
Some things are meant to be

撮影後、メキシコの作家が作ったという大野さんそっくりの指人形を慶人さんが手にとり、人形の踊りを披露してくれました。Can’t help falling loveに合わせて舞う人形大野一雄は、まるで生きているような存在感で迫ってきます。その姿に感極まるMasumiを見て、Jacquesはシャッターを切ります。

♪ For I can’t help falling in love with you
For I can’t help falling in love with you

Jacquesは、その人の輝きを捉える一心で、ポートレイトを撮影しました。ブティックでお客様に帽子を合わせるときも、一瞬現れる輝きを見つけるために帽子の角度を変えながら鏡に映るその人を見つめ続けました。
JACQUES LE CORREを身に着けることでその人がいきいきと輝く。これはJacquesとMasumiがコレクションに込める本意です。

♪I’ve seen that face before/Grace Jones
♪Can’t help falling in love/Elvis Presley


JACQUES LE CORRE


Christine

Nicolas

大野一雄

指人形大野一雄

Kate

Toriana