Engraved messages of love and soul
-ジュエリーに刻まれた愛と魂のメッセージ-


男女問わず幅広い年代のフアンの心を捉えて離さないセルジュ・トラヴァルのジュエリー。
スターリングシルバーやゴールドに一文字ずつ刻まれた文字が、素材そのものの持つ力強さと素朴な美しさを際立たせる。お気に入りの本や記憶、友人に提案されたフレーズなどをジュエリーに刻み続けたセルジュ。
彼が突然の交通事故により永遠に帰らぬ人となってから15年以上の歳月が経つ。生前のセルジュに最も近いところにいた2人の人物、パートナーのジュヌヴィエーヴと親友のフランシスの言葉とパーソナルなアルバムを紐解きながら、セルジュ・トラヴァルの作品に込められた愛と魂のメッセージをたどってみたい。

生まれながらの才能


いつも感嘆したのは、セルジュが持って生まれた才能そのもの。
私たちがトンカントンカンやっても全くうまくいかない作業を、パン、パン、パン!とちょうど良い力具合でパーフェクトにやってのけるのだった。そうして出来上がった完璧な形のジュエリーを見ていると、まるでメタルがセルジュの意思に沿って、彼の思いのままに曲がるかのようだった。


息子、ロックへの想い



1988年、私たちの息子、ロック・トラヴァルが誕生した。
セルジュは若い頃、自暴自棄な生活を送っていた、それは、彼が母親から求められて生まれたわけではないことと関係しているのかもしれなかった。その彼が、私がロックを妊娠したことを告げた時、いきなり窓際に走り寄り、発狂したかのように「うわーっ!」と外に向かって叫んだ。そしてキングコングのように胸元を叩き、「今まで自分の人生に愛着がなかったけど、これから生まれてくる子と母を守り抜くよ!」と言った。ある意味で、ロックの誕生が彼を救い、彼の人生に本当の意味での価値をもたらしたのだろう。

新しいコレクションが誕生するとき


展示会の3日前になると、アトリエの扉が固く閉ざされ鍵がかけられる。セルジュはここに24時間缶詰状態で寝泊まりし、一人きりで制作に没頭する。時々、親友のフランシスだけが中に入ることを許されたが、秘密が漏れてくることはなかった。最後の最後まで、セルジュがどの方向に向かってクリエイションを進めているのか、誰にも分からなかった。
展示会初日、ブースをセッティングしていると突然セルジュが現れる。上着やジーンズのポケットに手を突っ込み、何かごそごそと探しているかと思うと、ごちゃごちゃしたものを引っ張り出した。ガムが2枚、タバコの吸殻、ティッシュ、そしてそれらと一緒に取り出される新しいシルバーの作品。そのジュエリーたちには全く未知のフレーズや、以前に聞いたことのあるフレーズが刻まれているのだった。


ポケットの中の秘密


彼のポケットには、いつも新しい作品がごろごろと無造作に入れられていて、いきなり「これどう思う?」と手に乗せて突き出して見せる様は、まるでポケットから飴玉を取り出す子供のよう。飾り気のない、謙虚なやり方がいかにも彼らしかった。
新しいジュエリー以外にも、彼はいつもどこかへ出かけるたびに、木片や錆びた鉄片、鉄道の枕木や古い荷箱などを持ち帰ってきた。何も持ち帰らない日はなかったので、家中がセルジュの持ち帰ってきたオブジェでいっぱいだった。集めてきたものが彼のインスピレーションの一環だった。完璧な新品よりも、傷んで時を経たようなもののミステリアスな一面に惹かれているようだった。彼が何かを創造し、何かを愛するときには、パーフェクトでない部分がなければならなかった。いろいろな時を経てきた人が味わい深く、他人に感銘を与えられるように・・・


「刻む」という行為の意味


セルジュは自分の感情や気持ちを会話の中で普通に表現することがとても苦手だった。会話で伝える代わりに、「昨日電話くれてありがとう」という文字を刻印したメタル片を友人に送ることもあった。
私が大事にとっている指輪がある。それはセルジュが初めて作った指輪で、ふたつの輪がいびつにくっついているようなデザインのもの。このリングは、表面ではなく内側に「Je t’aime(愛してる)」と刻印されている。「うまく回らないけれど、とても固く溶接されていて、これが僕たちの関係を表しているんだ」と彼は語っていた。
刻印するという行為は不器用で無骨なセルジュにとって、“Dire(語る、話す)”ということに代わる彼らしい表現手段だったのだろう。