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福岡との県境に近い熊本県荒尾市。
ハンドルを握って曲がりくねった山道を行く。沿道の木々の切れ間から眼下に広がる美しい景色を見やる。ここは文禄の役(1592年)後、加藤清正公に伴われて来た朝鮮半島の陶工達によって小代山麓にて開窯された小代焼の産地。
この先に会いたい人が、見たいものがある。
小代・瑞穂窯福田るいさんを尋ねました。



◆小代・瑞穂窯と2匹の猫たち
お武家の屋敷のような逞しい門構え、山の傾斜の中の広い敷地にどっしりとした瓦屋根の母屋と2つの工房。
福田るいさんの祖父様の隠居先に、先代であるお父様福田豊水さんが構えた瑞穂窯。
南の大地に根差した威厳と風格を感じて背筋が伸びます。
ようこそ!と笑顔で迎えて下さった福田るいさんの笑顔は逞しく自然でほころび、
にゃーにゃーようこそ!とチャトラのみーちゃん、白長毛のもふちゃん、2匹の猫たちが陽の下、のびのびキャットウォークで歓迎してくれました。




◆伝統とは灰を守る事ではなく、燠を密かに保ちつづける事である。
福田るいさんは益子での修行を経て、ここ瑞穂窯で作陶。小代焼の伝統や特徴を生かしながら独自の焼成法を取り入れつつ、現代の生活に合ったうつわを生み出しています。
その使いやすさや生活に馴染んでゆく魅力から全国にファンを持ち、私土村も以前からるいさんの器を毎日愛用しています。
料理にはまっている主人もお気に入り。食卓がふわっと温かいムードになるのも、るいさんのうつわの魅力。

「今、土がすっからかんなのよ」とおっしゃるほどたくさんの器を焼き上げてくださっていました。
小代焼の産地で取れた鉄分を多く含む土地と、農業が盛んなこの土地の米作後の藁から作った藁灰、そしてこの土地でよく採れた松の木を薪にして、基本的には地産地消で作られる 小代焼。
水金での初イベントに向けて、お話を伺いながらセレクトしていきます。
隣でみーちゃんもせっせと梱包のお手伝い。



◆うつわの色
藁灰と土灰の配合次第でいろいろな色を出すのがるいさんの魔法。
藁灰と温度の調整で出す白をはじめ
今回は水金地火木土天冥海のイメージに合う宇宙のような深い会心の藍色が出たとのこと。
「皮クジラ」・「逆皮クジラ」はかつてよく食べたクジラのお刺身の皮と脂身のグラデーションを模した色。
「サカサフジ」は櫛目(細い縦線)を引いた素地に白と青が美しいグラデーションとなった、逆さにした富士山のよう。



◆しのぎの温かさ
「しのぎを削る」が語源かしら、とコーヒーを頂きながらお話が弾む。
「しのぎ」は手作業で縦に斜めに、土を削り取ってゆく伝統的な技法。
るいさんのしのぎシリーズはそのフォルムとの塩梅で温かな異国情緒を感じます。
しのぎで土が削り取られることで、少し軽量化されているのも特徴です。



しのぎの湯呑は凹凸が手に沿ってしっくりと収まりがよく、
しのぎのプレートは、フレームの如く盛ったお料理を一層華やかに見せます。
しのぎのポットは優に1リットルは淹れられる大きなポット。
コーヒー派のるいさんは毎日このポットにコーヒーをたっぷり作ってお飲みになるとか。
工房でもるいさん仕込みの美味しいコーヒーを、そして仕事後には紅茶をご馳走になりました。
たっぷりとお茶を仕込んで重くなっても、持ち手とその反対側の注ぎ口の取手に手を添えることで安定して注ぐことができます。
るいさんのしのぎのポットは、私もいつか購入したい憧れのポットです。



◆あえて崩したバランス
「民芸の世界でよく言われる、めし椀とは、というセオリー、バランスをあえて崩して作っています。」とるいさん。
めし椀の直径でどんぶりの深さにするなど、ちょっと深かったり、ちょっと広かったり、ちょっと反りあがっていたり。「何に使うんですか?」と聞かれますが、ちょっとバランスが異なるほうが、決めつけることなく多目的にお好きなように使って頂けるんです。と。
自由で縛りのない、大らかなるいさんらしい考えがうつわの中に映されています。



◆印花皿

るいさんが収集した様々な木版を押して文様を描いた印花皿。花小柄、タイル、まり花、矢羽根と、版による凹凸と釉薬の濃淡によって浮かび上がる文様はノスタルジックで、器としてだけでなく飾って見せたくなる魅力です。
福田るいさんのうつわから感じる土のぬくもり、あたたかな釉薬の色合い。
これらは魔法のように出来上がるものではなく、今日もどろっどろで粘土を作り、灰を混ぜて会心の色を見つけて、あの山であの窯で日々制作してくださっています。
「少しずつうまくなってますが、まだまだです。うつわづくりにおいてゴールはないのかもしれないです」とおっしゃる、るいさん。
土地から生まれた自然の素材と、大らかでありながらも研ぎ澄まされたるいさんの感覚で焼きあがる温かなうつわたち。
日々使い込むことで風合いが増してゆきます。
愛着を持って一つ一つ増やしてゆきたいと思います。 
水金バイヤー 土村真美