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H.P.FRANCE サステナビリティ対談
Vol.1 ものを大切にする暮らし


創業から37年、アッシュ・ペー・フランスが大切にしてきたサステナブルな活動とは?インテリア部門のスタッフが、クリエイターとお店で実施している取り組みや、これからの世の中について考えることを語りました。



PROFILE

代田 淑恵(しろた よしえ) 1996年入社、Bazar et Garde-Manger / H.P.DECO 店長。
村松 もも世(むらまつ ももよ) 2008年入社、Bazar et Garde-Manger / H.P.DECO /アッシュペーブチック 商品担当。
森 典子(もり のりこ) 2007年入社、H.P.DECO / H.P.DECO 好奇心の小部屋 商品担当。



「気持ち良いこと」を選択する生き方


 持続可能(サステナブル)な暮らしは、アッシュ・ペー・フランスの根っこの部分にずっと存在している思想だと思っています。私たちは大量生産や使い捨てではない一点物のアートや洋服を販売し、クリエイターの想いを伝え、彼らの活動をサポートしてきました。人の暮らしの本質とは「何が気持ち良いか」という素直な感覚だと私は考えます。それは、アッシュ・ペー・フランスが「クリエイションが人を豊かにする」という信念のもと、世の中に届けようとしている「豊かさ」に通じているのではないでしょうか。

村松 私たちの行動の中心には「創造的であるということ・グローバルであるということ・“人が生きる”ということ」という三つの企業理念が有りますが、そこから派生して「どうやってお客様を幸せにできるか」を追求していますよね。買い付けの時は、ただ売れるモノかで判断するのではなく、クリエイターの人間性を見て“本物”のクリエイションをセレクトし、お店のスタッフが一つ一つ丁寧にお客様に伝えます。大量生産によって誰か一人が搾取するのではなく、クリエイターと共存し、良い作品を発表できる場を作り続けている、アッシュ・ペー・フランスの活動自体がすごくサステナブルだと思っています。

代田 世の中で環境汚染や人権問題への注目がより一層高まり、最近は「サステナブル」という言葉だけが一人歩きしているようにも感じます。しかし、アッシュ・ペー・フランスのコミュニティではスタッフもお客様も、クリエイターの血が通ったクリエイションを通して、自然と「気持ち良いこと」を選択しています。彼らの生き方を見ていると、世の中の流れとは関係なく、そこに目を向けて取り組んでいることが分かります。

パリにあるLa Soufflerieのアトリエ。クリエイター、セバスチャンが手掛けた作品や、彼が暮らしの中で活用している廃材などが並ぶ。


 La Soufflerie(ラ・スフルリー)のクリエイターであるセバスチャンは、リサイクルガラスを用いて作品を制作しています。ガラスという素材は割れてもまた溶かして再利用できるもの。最近は食料を保存するエコな素材として蜜蝋のラップも注目されますが、彼はそれさえも使わず、容器とサイズが合うガラスの蓋を使ったり、残ったらそのまま冷蔵庫に入れれば良いねと言ったり、考え方ではなく元々の生き方そのものに持続可能な選択が染み付いているのでしょうね。
La Soufflerieのアトリエで使用されるリサイクルガラスの山。
ガラスを溶かし、形作っているセバスチャン。
村松 ASTIER de VILLATTE(アスティエ・ド・ヴィラット)は、サントノーレにあるお店が19世紀の建築物をそのまま使用していたり、フランス最古で唯一の活版印刷機を老舗の印刷会社から引き継いで活版印刷を継承したりと、古くからある文化や技術を未来に繋いでいこうとする精神が素晴らしいと思います。 

 文化を残すためにはお金も手間もかかりますが、美しいものを残そうする考えが、クリエイターたちの生き方そのものと通じていますね。木材の作品を作るパトリックは、道端で見つけた個性的な木が個性的で面白いからと、それを活かした作品を作ったりしていて、まさに自然と共存しながら暮らしています。
大量生産や効率性が重視される中でファストファッションが台頭し、世の中では洋服をワンシーズン着たら大量に捨てるようになり、ものを大事にする意識も薄れてしまった。昔からあるものの美しさや、時間と手間をかけることの尊さは、次世代へ残していかなければいけないと思います。
パトリックが拾った木材で制作したリングやオブジェ。
Bazar et Garde-Mangerで展開しているリサイクルペーパーのペンダントライト。
代田 Bazar et Garde-Mangerで長年扱っているリサイクルペーパーの照明も、代表的なサステナブル商品です。デザイナーは環境問題を意識して、塩を用いた作品も作っています。
彼らは皆、どうしたら気持ち良く生活できるかを考え、まず自分自身を大切にしています。それが形になって、周りの人にも影響している。単純にエコな方法を提案するのとは違い、アッシュ・ペー・フランスで扱う商品はクリエイターたちの生き方そのものが表現されるから、作品にユーモアや感性がついてくるところが面白いですよね。

 不思議なもので、画期的・機能的とはまた違った魅力があり、そこにクリエイティブを感じます。それぞれ表現方法は違っても、自然と気持ち良いと思う生き方を選択することで、自分たちの創作意欲を存分に発散できるのではないしょうか。

   
   

「当たり前」になるまで


代田 クリエイターを見ていると、生み出すことと表裏一体で、ものを大事にしていると感じます。アッシュ・ペー・フランスは特にこだわりが強いクリエイターが多いですが、彼らは自分の作品をどのバイヤーが買い付け、お店でどのようにお客様の手に渡るのかまで気にかけていて、それ程作品を大切に思っています。ヨーロッパでは昔から、貧富の差に関係なく大事なものは自分たちの手で作ったり、一生ものとして代々受け継がれたり、何度も修理しながら大事に使っていこうという文化が根付いているという背景も関係しているでしょうね。

村松 クリエイターは人を大事にする気持ちも強いですね。Leo ATLaNTE(レオ・アトランテ)はデッドストックからヨーロッパの上質な布を見つけてきて、モロッコ南部のティズニットという街で女性たちを雇い、フェアトレードでファブリックを制作しています。収益の一部で現地に学校も建てたそうですが、彼らと話していると優しい人間性が伝わってきて、温かい気持ちになります。

Leo Atlanteのワークショップがあるモロッコのティズニット。


代田 理念にもある「人が生きるということ」を、自然と実践しているクリエイターが集まっていますよね。どうすれば皆が幸せに暮らせるかを考えて、その想いがものづくりに表れています。そして、自然と彼らの作品を好んで買って下さるお客様にも、その精神が共通していると思います。クリエイターの活動を知ることで、自分たちもまた何ができるか考えるきっかけにもなる。難しい言葉で理解するのではなく、選んだ商品にクリエイターの想いが付いてくるから、自然と自分の中にスッと入ってくるのだと思います。
デッドストックの布を繋ぎ合わせたLeo ATLaNTEのクロス。
Leo ATLaNTEデザイナーのクリストフ(左)とマヌー(右)。
村松 インテリア雑貨は繊細な商品も多いので、商品を発送する際はプラスチックの緩衝材を使用した梱包が主流ですが、La SoufflerieやASTIER de VILLATTEはパリの本店でずっと紙梱包を行っていて、数年前からアッシュ・ペー・フランスでも紙梱包を実践するようになりました。また、資源をなるべく無駄にしないようお客様への発送時に緩衝材を再利用したり、アッシュペーブチックでは段ボールも再利用しますが、お客様にご説明すると、皆様受け入れて下さいます。

代田 日本では、まだまだ新品の箱の中にプラスチックで頑丈に包まれて届くことが当たり前なので、繊細な商品を紙で安全に包むことができるのか、お客様に対して使用済みの梱包材を利用しても良いのか、最初は戸惑いもありました。しかし、セバスチャンから直々に包装の仕方を教えてもらい、一年以上経った今ではもう紙で包むことが当たり前になりました。

 素材だけでなく使用する資源の量も重要ですよね。紙だから過剰に使用して良いわけでなく、割れない程度に適量を使用してお送りすることも心掛けています。

村松 H.P.DECOで始めた、割れた陶器を金継ぎする修理は、クリエイターからも好評でした。大事に使っていたものを直して何度も使うという行為は、根本的にものを大切にする精神に繋がっていると思います。

代田 私たち自身も実際にお店で取り組んできて感じることは、当たり前になるまで続けると、自然と浸透していくということ。コンビニやスーパーでビニール袋が有料化をきっかけに、最近はお客様から袋はいらないとお断りされることが本当に増えました。世の中全体がもっと当たり前化すれば、持続可能な選択を意識する人も更に増えていくはずです。
Bazar et Garde-MangerとH.P.DECOで実施されている紙梱包の様子。
金継ぎされたASTIER de VILLATTEのプレートとティーカップ。

ものへの愛情が共感を生む


村松 クリエイターだけでなく、アッシュ・ペー・フランスはスタッフも皆ものへの愛着が強いと思います。
以前、ASTIER de VILLATTE(アスティエ・ド・ヴィラット)が来日の際にお土産で貰ったチョコレートの箱をずっと大事に保管していたのですが、お店のスタッフが間違えて捨ててしまい憤慨するという、大事にし過ぎる故に心が狭くなったエピソードもあります。

代田 他人にとってはゴミに見えても、自分にとっては宝物だという気持ち、よく分かります。私もお店で貰った葉書やショッパーを集めていました。そういう風に、ずっと取っておきたいと思うようなものをお客様にもお届けしていきたいですね。

村松 商品への愛着も物凄いですよね。店舗間で定期的に商品入れ替を行と、毎度代田さんを始めどのお店のスタッフもお店から商品を出すのを渋るのですが、それさえも愛しくなります(笑)。

 お店でお客様にご紹介していると、つい自分も欲しくなってしまって。本当は手放したくないけれどこの方に使っていただけるなら…、という気持ちでいつも送り出しています。

村松 自分がお客様として買い物をするなら、それくらいスタッフが愛着を持っているお店で買いたい。一つ一つの商品が大事にされている証だと思います。

代田 お客様の中には「スタッフの方々も好きですもんね…私が買っても大丈夫ですか?」と笑いながらご購入下さる方もいます。スタッフがお店に置いてある商品が大好きで、大切にしているからこそ、お客様も共感して下さり、自然とアッシュ・ペー・フランスのコミュニティが広がっていくのだと思います。

店長 代田、H.P.DECOのLa Soufflerieコーナーにて。



人と人との繋がりの中に


代田 コロナ禍の息苦しい暮らしをきっかけに、生きていく上で何が大切か、今一度立ち止まって見つめる時間にもなりました。そしてたどり着いた答えは、やっぱり、自分はもちろん周りの人も大事にしたいということ。一人より二人で食べるご飯が美味しいように、人と人のコミュニケーションが生きる楽しさに繋がると気づきました。

村松 商品を誰から買うか、ということもより一層大切になっていくと思います。お客様がアクセサリーを買うと、「あのお店で、あの人がこんなストーリーを語ってくれたな」という思い出も一緒に身に着けます。食器一つとっても、ブランドありきで選ぶのではなく「この人と一緒に選んだ物」という思い出が心に刻まれ、その瞬間を思い出すたびに持ち主を幸せにできるようなお店でありたいですね。

代田 「記憶に残る接客」という言葉がありますが、「あの人に勧めてもらったものだから大事にしたい」と自然に思ってもらえるような、人と人の繋がりありきの伝え方をしていきたいです。

村松 自分たちの仕事を通して人を幸せにしたいという気持ちが根本にあるから、今の形に繋がっていると思います。この想いを伝えながら、人を幸せにするクリエイターや商品にもっともっと出会っていきたい。そして、自分の目で見て、触れて、人の話を聞いて選んでいただけるお店でありたいですね。

 本当に良いものだから、まずははこれを買って、次は…とストーリーが繋がっていく。瞬間的であったり、話題に左右されないこと。それこそが持続可能な選択であり、アッシュ・ペー・フランスの良さだと思います。そして、その生き方は、アクセサリー、お洋服、食卓に並べるもの…と一つのストーリーとなって全て繋がっていくのでしょう。

文章:米田沙良(アッシュ・ペー・フランス 広報部)