Loading...

emi takazawa
「刺繍花が生まれるまで」


血が通うように花びらを走る無数の絹糸の線。きゅっと固く閉じた蕾、小さな希望をもって顔を出した芽。春の訪れと共にたおやかに咲いた春子、レースの花びらは可憐に囁いて。それぞれが意思や感情をもって今にも動き出しそうな刺繍花たちは、全て空想の花。世にも美しいemi takazawaの刺繍花が生まれるまでのビハインドストーリーをお届けいたします。
▶︎ 先日配信しましたIGTVはこちらからご覧いただけます。
◆群馬県桐生生まれ
明治5年、後に世界遺産となる富岡製糸工場が設立され、以来日本の絹産業をけん引してきたこの町で生まれ育った作家・髙澤恵美さん。恵美さんの祖父母は養蚕を営んでおられ、幼い頃から「縫いこと」に親しんで育ちました。

◆モードと古きもののはざまで
都会への憧れもあって、文化服装学院へ進学。広くファッションを学び、モードを追いかける一方で感じていたのは古きものへの憧れ。京都へ渡り様々な手工業に触れ刺激を受けながら、一体自分が本当に生業にしたいものはなんなのかを模索したモラトリアム期。そんな恵美さんが運命的な出会いを果たしたのは、他の何処でもない、故郷・桐生でした。

◆運命的出会い
帰省した桐生で母と横振り刺繍の展示会に足を運んだ時の事。そこでは横振り刺繍の伝統工芸士さんが実演をしておられました。針が横に動き続ける横振りミシンを踏み、枠に張られた布を両手で優雅に動かしながら美しい絵を描いていく、それはまるで楽器を演奏しているかのような美しい光景で、恵美さんは一目惚れします。
熱視線を受けた職人さんより体験できますよとお誘いを受け、生まれて初めて横振り刺縫体験。縫ってみたのは、自身の名前「emi」。
糸で絵を描く事。まさにこの感覚でした。伝統工芸士さんにも「筋がいいね」と声かけをしてもらい、「私の人生変わるかも」と母に興奮して伝えたことを鮮明に覚えています。これが私の生業だと、何の躊躇なくその場で横振り刺繍の会社に入社を懇願し1週間後に入社しました。
◆横振り刺繍・技術の習得
横振り刺繍の会社に入社後1年はひたすら勉強の日々。まっすぐ縫う事、丸く縫う事、周りの職人さんたちを見ながら学びました。1年後、婚礼衣装に挑戦させて頂き、赤や黄色の晴れ晴れしい色調の刺繍を手掛けます。それは全てが勉強でした。
 
◆転機となるモノトーンの薔薇
そして3年後、舞台衣装を縫う機会が訪れ、これが転機となります。舞台衣装に施す刺繍は、これまで縫ってきた婚礼衣装の鮮やかな吉祥文様とは異なる、モノトーンの薔薇でした。白から黒への糸のグラデーションや、糸の走り、表情、花びらの形向きについて、とことん観察して思いを巡らせて縫い上げた、モノトーンの薔薇。会心の刺繍、会心の世界観でした。
◆24歳独立へ
自分の表現したい世界感。それがわかり始めた頃、会社の社長さんに中国産の手刺繍の婚礼衣装を見せられます。美しい仕上がり、当時の中国産コストの安さ。このままでは日本の横振り刺繍がなくなってしまうのではないかという危機を感じました。まだまだ若い細腕の一職人の中に燃えたぎるものは増してゆきます。作りたいもの、支えたいもの、伝えたいもの。
そんな時、自宅でも制作ができるようにと先輩の職人さんが恵美さんに 横振りミシンを1台譲ってくださり背中を押してくれます。それは今も恵美さんがお使いになっている横振りミシン「GOLD QUEEN」です。こうして24歳、入社後3年で恵美さんは独立して、自分のアトリエで作品作りを始めてゆきます。
◆刺繍花がうまれるとき
独立してからはモノトーンで様々な形の花びらを思い描きながら刺繍して、何のためでもなくそれを一枚一枚切り取って貯めていました。そんなある日、友人の結婚式に招待され、髪に飾るものを探していた恵美さんはその切り取られた花びらの何枚かを手に取って合わせてみたところ、刺繍が立体の花となることに気づきました。学生時代の授業で使用したコテを引っ張り出して、丸みをつけたり表情を足してゆくと、そこにどこにもない、emiさんだけの刺繍花が生まれたのです。刺繍花となることで、着物の世界から飛び出して、好きな時に好きなように横振り刺繍を身に着けることができる。それは大きな発見でした。
「まず大前提に実際に咲いている花以上に美しいものはできないんです。だから実際の花を見て作ったりはしないのです。花はいつも感情と共に生まれてくるんです。白い壁から、お風呂の壁から、その花たちが浮かんでくる。それは刺繍花を始めた2009年からずっとそう。その浮かび上がってきた花たちをすぐに描き留めずに、花たちと会話するんです。そうすると花たちが変化していくから。」恵美さんは話します。

見る者の胸を打つのは刺繍花たちの容姿だけでなく、刺繍花たちの持つ内面的なところにあるのかもしれません。こうして生まれた世にも美しい刺繍花。故郷、群馬県産の絹糸は殊更滑らかな光沢を持ちます。この糸にも本当に助けられて刺繍花が生き生きと輝くんです、と。群馬県産の糸にこだわり、桐生の染色工場で染め分けた絹糸を用いて。
お蚕さんの息遣いを感じながら気持ちを込めて今日も横振りミシンを踏みます。





取り扱い店舗

水金地火木土天冥海

東京都渋谷区神宮前 5-2-11 3F

電話番号:03-3406-0888
営業時間:12:00〜19:30
水曜定休