用の美を体現するブランドの原点


仏、アスティエ・ド・ヴィラット。家具と陶器のブランドとして、ブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットとイヴァン・ペリコーリの二人が1996年に創業。パリで唯一の陶器メーカーとして、マセナ大通りのアトリエから世界中へと作品を届けている。2008年よりコレクションに加わったキャンドル、お香、香水などの香料製品からは、陶器の作品群とはまた違ったアスティエ・ド・ヴィラットのクリエイションの世界を窺い知る事ができる。

「シンプル」と名付けられた陶器のコレクション。創業当時より制作され、現在も不動の人気を誇るこのコレクションからは、深みを増すアスティエ・ド・ヴィラットの世界、その原点ともいえるデザイナーの美への視点を感じとれる。

白い釉薬が施されたシンプルのコレクションは、口縁に引かれた、ただ一筋の歪な線が唯一の装飾性を添える。「簡素」という形容句は、このコレクションを表すに相応しい表現であるだろう。「簡素」という表現の行間に深く根付いたものは、「欠乏」や「質素さ」ではなく、この上なく慎ましやかな豊かさであり、おおらかな寛容さであるからだ。
アスティエ・ド・ヴィラットの他のコレクションは、例えるならば絵画を惹き立てる額装の様であるけれど、シンプルというこのコレクションは、寧ろ白いキャンバスそのものに思える。このコレクションの美は、まさにそこに依拠している。

例えば、シンプル・コレクションの3種類のカップのシリーズ。ティー・カップ、ショコラ・カップ、マグカップと、3種の大きさと形がある。だが、そこにジェンダーや年齢等の垣根はない。デザインが、使う側を絞っていない。武骨な男性の手、鮮やかなマニキュアで彩られた女性の手、柔らかな子供の手、年輪の様に皺が刻まれた老人の手。其々の個性が、白いキャンバスを彩る絵の具となる。用の美とは、何も「使い勝手が良い」という事だけではないのではないかと考える。「使う事が美を生む」という概念も、また用の美と呼べるのではないか。

パリ郊外で採掘された陶土を使い、パリ市内のアトリエで、無名の職人達の手によって形作られるアスティエ・ド・ヴィラットの陶器コレクション。まるで19世紀の工房の様に時間をかけ、全て手作業によって仕上げられるこれらの作品を使うのも、また誰かの手だ。もしあなたが、未だアスティエ・ド・ヴィラットの陶器を使った事がないのであれば、是非シンプルのコレクションをあなたの日常に加えて欲しい。きっと、「簡素さ」の美と価値があなたの日常を豊かにしてくれる筈だから。