パリの手仕事から生まれた、現代の“用の美”


アスティエ・ド・ヴィラットによる古典的なデザインのシリーズ「レジョンス」。シリーズ名は18世紀フランスの摂政時代La Régenceに由来する。

イタリア、ルネッサンスの頃に流行したモチーフが、ナポレオン・ボナパルトの古典主義への偏愛により再び脚光を浴び、装飾のモチーフとして18世紀末のフランスで流行した。アスティエ・ド・ヴィラットによるレジョンス・シリーズは、当時のデコレーションモチーフにインスピレーションを得ているため、装飾的であるものの同時にシンプルさをも感じさせる仕上がりとなっている。

陶土はパリ郊外で採掘され、パリ市内の工房へと運ばれる。工房で空気を抜くために何度も練られた土は、職人たちの手によりひとつひとつ形作られた後、窯に入れ仕上げられる。今の時代からすれば時代遅れな手法と呼べるかもしれないが、近代的な生産工程とは真逆をいく、まるで19世紀の工房のような時間のかけ方が、全ての器に土を捏ねた手のぬくもりを残すのである。器の裏を注意深く見ると、アスティエ・ド・ヴィラットのマークの下にイニシャルが刻まれていることに気付くだろう。これはその器を手掛けた職人のイニシャルであり、正真正銘のアスティエ・ド・ヴィラット社の器の証なのだ。

アスティエ・ド・ヴィラットの代名詞とも呼べる純白の釉薬を纏った器は、ところどころ土色が柔らかく透け、大量生産の工業品には生み出すことの出来ない、得も言われぬ凛とした存在感を放つ。トマトスープの赤、新鮮なハーブの生き生きとした緑、卵の幸せな黄色、パン・ド・カンパーニュの素朴な茶色、揚げ上がったフライの豊かな黄金色、切り分けたオレンジの鮮やかな柑子色…、この美しい白色は料理や果物を盛りつけたとき、楚々とした気品ある背景となり、食材それ自体が持つ、美しい、自然の色味を際立たせてくれる。独特の硬質な質感もまた、箸やフォーク、スプーンが触れたとき、アスティエ・ド・ヴィラットの器を使っていることを感覚的に伝えてくる。

北大路魯山人は「食器は料理にとっての着物である」と言ったが、かつて魯山人が和の器に見た美を、パリで作られるこの器にも見て取ることが出来る。無名の職人たちの手仕事から生みだされる、「用の美」。それはまさに、未来のアンティークと呼ぶにふさわしい、永遠の名品である。