第3章 仕入れの旅



ネパール、ポカラへ。



チベット難民のおばさんたちとの物々交換では、言葉は通じないながらも笑いながらやり取りするのが毎日の楽しみ。



インドやタイの辺境の地にあるアンティーク屋の人々とはもう古い付き合いで、会う度に近況報告しあったり、アンティーク談義に花が咲いたり。



言葉だけではない、ルールなんてない。
これまで育んできた人々との縁を辿ることが、アンティークの買付けに繋がる。



アンティークの魅力。
色褪せたその儚さ。
今よりもきっと貧しい道具で果てしない時間をかけて仕上げた丁寧な職人技。
どのような年月を経てきたのか、、、
想像すると心が躍り、またその時間を感じさせない輝きがある。



数多ある中、それらが訴えかける声を肌身で感じて選び取り、これまでの知見を生かして、値踏み、交渉する。
アンティークの買付けは、いわば旅の集大成だ。

そして特筆すべき、Minakusiのクリエイションを支える もう一つの旅。
舞台はインド・ジャイプール。



「ナマステ!ケンアンドエリ!」
この街にも毎年2人の到着を笑顔で迎え待つ人たちがたくさんいる。



Minakusiのアクセサリーの下地作りとも言えるパーツを委ねるジャイプールの職人たちとの関係性はもはや、モノのやり取りだけではない。

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彼らとは青年期から身の回りを心配したり、苦楽を共にした、今やもう兄弟のよう。



自分たちのデザインではあるけれど、一つ一つ職人たちが作り上げたパーツに、それらを特別なアクセサリーに仕上げねばならない使命感のようなものさえ感じ、何時も創作意欲をかき立てられる。



職人たちにも家族があり、小さな子どもを抱えている。



そんな彼らの生活の背景までもを把握して、誰の手がどの仕事に向いているか判断し、仕事を振り分け、そして厳しい目で見守るのがMinakusi流。

穴あけ職人のスラジー。
実直な彼に多大の信頼を置いている。



シンプルな原理の道具で、硬い水晶に忠実な穴を空けてくれる。



彼の手が物語るのは仕事に律儀なその半生。



今、昔。

たくさんの ‘手’ がMinakusiを作り上げている。

第4章 旅から戻り



今回の仕入れの旅で手元に集まったのは足を運び、手で触れ、耳を傾け吟味したアンティーク。



人々に代々受け継がれ、意図的に作り出せない輝きと艶を醸し出し、圧倒的に柔らかな触り心地を掌に感じることができる。

そしてあの熱気に満ちた小さな工房で仕上げられた銀のパーツたちは



それ一つ一つは小さなものであるけれど、これがなくては完成しないMinakusiの骨のようなもの。



そして自分たちの審美眼のみに委ねて選び抜いた天然石は、今回も意思のある魅力に満ちている。



出会えて、よかった。

まだ昨日のことのように近しい旅の記憶とともに一度全てのパーツを、アトリエの床に並べてみる。

少し温かい。

アンティークを通して、シルバーを通して、あの顔やあの手、あの街も見える。



愛おしい。

次の瞬間 全てが消えた。
もう持ち主の顔はそこにはない。
鈍く艶めくパーツたちと、自分の中の感覚のみが対峙する。
どう組み合わせ、どう生かすか。

旅を通して培った感覚を、今、研ぎ澄まして。
蝋引き紐を引く指先に 熱が篭る。
新しい持ち主に、この情熱を届けるために。

(文:土村真美 撮影:杉村遥奈 写真提供:工房Minakusi)