第1章 五感に届く旅=ライフワーク

初めてインドに降り立った地は、カルカッタだった。



毎週足を運んだ寺院にて、
太鼓の音をかき鳴らしながらカルカッタの地母神カーリー神に
ヤギの血を捧げる儀式を目の当たりにしたとき

ドゥルガー神やカーリー神の姿は
大自然への畏敬の念から生まれたものだと実感する一方で、
その土地に象られた様々なデザインの背景に興味をもった。

南インドのマドゥライ。

圧倒的な存在感でそびえ立つミナクシ寺院の、天井や廊下に延々と描かれた極彩色の花模様が、実に壮観で吸い込まれる。





またマドゥライの朝はいつも英里さんの心を躍らせた。村の家々の玄関には毎朝チョークでその家ごとに異なるデザインの小さなマントラが描かれる。



生活の中にも溶け込む素朴な美しさに,気持ちが満たされていった。

その頃、健さんは中南米はグアテマラ、そしてペルーに飛んでいた。



そこには色とりどりの民族衣裳を纏う人々が暮らしていた。
地上を見渡す太陽に捧げる、弾けるようなその色彩感覚に感動する。



そう、全ては太陽のために。

悪路が続く道のりにへとへとになりながら辿り着き出会う、大自然の中に取り残された遺跡や壁画。

I



それらに圧倒される瞬間に生まれる
日常を忘れさせる大きな感動。

強い日差しの隙間にふくそよ風、



甘美なフルーツの匂いや人間と共存する動物たちの営み、



見知らぬ私たちに「ハロー!」と手を振りながら無垢な笑顔を向ける子どもたち・・・



ささやかな嬉しい出来事の連続。

大きな感動、小さな喜び

それら全てが、旅だ。



旅は私たちのライフワークであると、口を揃えるMinakusiの健さんと英里さん。



もう旅を20年以上続けていても相変わらず心が震え、五感を刺激される。

その感動が彼らの中に揺るぎない色彩感覚とバランス感覚、見て触れた旅人のみが得る、ある種のロジックを作り上げている。

 

第二章 旅=生業のきっかけ



そもそもMinakusiの2人がアクセサリーを作り始めたきっかけは
それぞれ旅先での出会いによるものだった。

チリを旅していた健さんは、現地で石研ぎ職人に出会い、拾い集めた名前もないけれど味のある硬い石たちを自在に操る扉を開けた。



また英里さんも、インドのオリッサを旅していた頃、道を教えてくれた人々にガラスビーズと紐で簡単に作ったアクセサリーをプレゼントしていたのが、今思えば始まりだったという。



旅を通した沢山の出会い、別れ、孤独と戦いながら
アクセサリーの作り手というアイデンティティを手にいれた。

若かりし頃の気ままな旅が今の2人の生業を引き寄せたのだと思うと、本当に掛け替えがない。

そんな2人が出会い夫婦となり、始まったMinakusiとしての旅。

年を重ねた今も、昔と変わらずローカルマーケットに足を運び、土地の人々と同じ目線で街を見渡す。



馴染みの店での挨拶。
笑顔で迎え入れられる居心地のよさ。





雑踏の中に見つけるのは、どんなに貧しい生活の中でも息づく美しいもの。

プリミティブの美しさへの追求は揺るぎがない。



「心を動かされるなにかに出会う旅 Minakusi 後編」へ続く

(文:土村真美 撮影:杉村遥奈 写真提供:工房Minakusi)