アート感のある関係性


アッシュ・ぺ ー・フランスきってのコレクターである村松孝尚(代表取締役)と古田絵里(記憶 H.P.FRANCE)が、東京・上野にある村松の書斎にて対談を行った。二人が蒐集してきたコレクションから、アート感についてそれぞれの想いを語る。



古田絵里(以下 古田) 2012年、村松社長は「松ノ市」と称し、ご自身のアートコレクションを販売する蚤の市を開催しました。私もそこで以前から欲しかった牛のオブジェを買いましたが、この「松ノ市」のコンセプトがとても印象に残っています。
 - 松ノ市は、石ころからネオンまで、村松の考えるための話し相手としてその時々に集まって来てしまったものの蚤ノ市です。-
村松社長にとって、アートはコレクションであり、考えるための話し相手なのですね。
村松孝尚(以下 村松) その通り。とにかく考えることが好きで、私にとって「アート感のある暮らし」は考えるための道具かもしれない。0から1へ何かを考え出す時、話し相手が必要なんです。それが貝だったり、石だったり。物凄く大きなガラスの塊と会話した時期もありました。

古田 アートだと判断する基準は難しいですが、高額な作品も、村松社長がどこかの温泉で拾ってきた石も、大切に並べられた様を見ているとどちらもアートだと感じます。人によって捉え方が違いますが、そのモノの居場所がきちんと作られて、それが特別だと見なされているかどうか、なのかな?とも感じました。

村松 アートの領域とは、それはアートじゃない、などと言われると難解になる。だから「アートのある暮らし」じゃなくて「アート感のある暮らし」なんですね。この二つは全然違う。古田さんの言う、たとえ石でも自分にとってはアートになるっていうのはまさに「アート感のある暮らし」。私の場合、「アート感」のない世界に放り込まれた途端に思考が停止してしまう。

古田 アート感の「感」は感じること?つまり、アートを感じるという意味でしょうか。心を動かされるというか。

村松 そう。だから、世界的に評価されている作品であっても、私はそれに全くアートを感じず、興味が湧かないこともあります。逆に石ころや、ごろごろした貝殻に感動して刺激を貰うことも。
マティアス・アンド・ナタリーの作品はどれも30年ほど前に手に入れたもの。
古田 何でもないモノも、捉え方次第で特別になるかもしれない。以前体調を崩してしばらく休職するという時に、村松社長がくださった白い貝があります。辛い治療中はその貝を傍らに置いて時を過ごしていました。私自身も販売の仕事を長く続けていて、これからの時代はモノを売るだけでなく、そういった「アート感」も共にすることが大切なのだと感じています。

村松 私にとって「アート感」は考える話し相手だけれど、例えば古田さんにとっては瞬間的な生きる力になり、お客様にとってはまた違うものになる。幅広く色々な形の「アート感」が存在します。

村松が古田に贈ったシャコガイ。
世界中で集めたアートが壁一面に飾られている。
古田 村松社長の部屋には無数のアート感コレクションが並んでいますが、アッシュ・ぺー・フランス自体が、村松社長のコレクションそのものですよね。村松社長が選んだクリエイター、バイヤー、そして彼らが選んだクリエイションがお店を飾り、それを伝えるスタッフと共感するお客様が一つのコミュニティを形成しています。

村松 作品も社員も、自然と集まってくるんだよね。お互い選び合うように。
マティアス・アンド・ナタリーによる段ボールアート。
古田 もし自分がアッシュ・ぺ ー・フランスで働いていなかったら、こんなにもアクセサリーや小物を蒐集するコレクターにはならなかったのではないかと思います。見たこともない、素晴らしいものに出合うと、凄く嬉しくなって、気持ちが高まりますよね。私の場合は自然と集まってくるというか、つい集めてしまう。それくらい自分の手元に置いておきたいものが、毎シーズン、入社前からなので20年以上ずっと在り続けている。最初のうちは良いと思ったものを無我夢中に集めていましたが、段々と自分に似合うものをきちんと選ぶように、そして次はその日にご来店されるお客様に合わせて自分のコレクションをコーディネートし作品を共有するようになりました。これもアート感のある暮らしであり、アート感のある仕事の一つの形なのかなと。

村松 まさにそう思います。最近、Claudine Vitry(クロディーヌ・ヴィトリー)がインタビューで「世界に棲むあらゆるもの、人類全体がアーティスト、クリエイターであったらいいな」と言っていました。作る人も、紹介する人も、着ける人もみんな同じ美しい世界を共有できる社会が、私たちの活動が目指すところだから。

古田 自分一人だけでなく、皆で共有して幸せになることが大切ですね。これからの時代、お店やギャラリー、展示会などもそういう場であるのでしょう。お店にご来店されるお客様に「美術館みたい」と言って頂くことがよくありますが、ひとつひとつ意味をもってディスプレイされている商品はもちろん、お店に立つスタッフが身につけるものもお客様の心を動かして、広めていけたら嬉しい。そうして「アート感」は繋がっていくのではないでしょうか。
窓側のデスクにはステファノ・ポレッティのカラフルな花器“Botanicus”が並ぶ。
ナタリー・レテ作のオブジェ。
村松 D-due(デ ・ドゥエ)のデザイナー、アルフレドがワインをプレゼントしてくれた時も、包みにシュシュシュッと色鉛筆でイラストを描いてくれた。アート感のある暮らしはこういう贈り物 のような行為の中にも出てきます。
人に対する「礼儀」という言葉が「アート感」に置き換わる意味合いで、「アート感のある関係性」の元にお客様やスタッフ、クリエイター同士が接する。品の悪いことはしたくない、されたくもないように、人と人の大事な付き合いの中に「アート感のある関係性」も存在します。そして職業や身分に関係なく、そうやって社会そのものが繋がる形を目指したい、なかなか難しいかもしれないけれど。

古田 モノを売るだけではなく人と人のあり方そのものを作っていく、それを目指しているアッシュ・ぺー・フランスは一歩先の未来を見つめているのかもしれませんね。お店に来て下さるお客様と私たちも、そしてスタッフ同士も、クリエイターの作る素晴らしいコレクションが存在するこの場を通して、そういう特別な関係性を築いていくことができると信じています。
デ・ドゥエのデザイナー、アルフレドから贈られたワインの箱。
壁に並ぶお面。左はクリスティーナ・トロの作品。他の二つはアフリカで購入した。
パリで見つけたカバのゴム製おもちゃ。

ーアッシュ・ペー・フランスのアート月間が始まりますー


アッシュ・ペー・フランスでは 、アート感を取り入れた生活をお客様に提供する活動「ART MATTERS」をスタートします。
10月の1ヵ月は「青参道アートフェア」を中心に、全国の店舗作品を展示し、「アート感のある生活」に関わる企画を実施。
アートを通じて豊かさを提供することを目指します。