A Small Gem


H.P.F, CHRISTOPHER





Christopher Street クリストファー・ストリート。1799年からニューヨーク、ウェストビレッジに存在するその通りに、ニューヨークの私達のお店H.P.F,CHRISTOPHERはあります。何度もブラックのペンキが塗り重ねられたショーウィンドウ横のドアを入ると、奥に細長い店内が広がります。左手に暖炉、コーラル色の生地が張られたロッキングチェア、奥に見える背の高い食器棚、ワインの染みが残るダイニングテーブル。誰かの部屋に不意に訪れたかのようなその空間に、紅茶とジュエリー、そして紅茶まわりの器が並んでいます。お客様が、私達のお店を、“A Small Gem”と呼びます。街の中に見つけた小さな宝石、宝物のようなお店だと。ウェストビレッジは、碁盤の目に通りが交差するニューヨークの中にあって異彩を放つエリアで、どこかヨーロッパの街並みのように入り組んで、街歩きの楽しみを刺激してくれます。クリストファー・ストリートでも、いつもどこかのビルディングが、その面影を保つべく改装工事中で、そうでなくても道幅が狭いのに、犬とその飼い主と行き交うのに立ち止まり、そこにコミュニケーションが生まれ、あぁ、ここには文化があるのだと感じされられます。1910年代から長きにわたって、ウェストビレッジはボヘミアン・カルチャーの発信地でした。今も続くニューヨークで最初のオフ・ブロードウェイのシアターが生まれ、アメリカのアートを専門に扱うホイットニー・ミュージアムもオープンし、Café Societyという人種によって才能が区別されない場所で、ビリー・ホリデーやマイルス・デイビス、サラ・ヴォーンがジャズを奏でました。


オルタナティブな文化を受容し発信し続けてきた場所


1969年6月28日、クリストファー・ストリートの三角形の交差点にあるゲイバーStonewall Innで、そこに集っていた人々と警官との間で衝突が起こりました。それが暴動へと発展したのをきっかけに、1970年代、LGBTQムーブメントが加速していき、Stonewall Innおよびクリストファー・ストリートはそのアイコンとなります。暴動から1年後の1970年6月最後の日曜日には、5,000人以上の人々が集まり、セントラルパークまで行進したそうです。この行進は、プライドパレードとして、毎年6月最後の日曜日に開催され続けています。毎年6月が近づくとクリストファー・ストリートはLGBTQムーブメントを象徴するレインボーフラッグで埋め尽くされますが、50周年だった今年2019年は、ニューヨークの街中がレインボーで溢れました。カナダやアイスランドで同性婚を認める法律が6月28日に合わせて制定されてきたように、これからもこのムーブメントは意志を持って変容しながら広がり続けることでしょう。ウェストビレッジ、そしてクリストファー・ストリートとは、時代の移り変わりの中で、いつも、オルタナティブな(=もうひとつの)文化を受容し、発信し続けてきた場所です。H.P.F, CHRISTOPHERはそこに在って、ここにしかないクリエイターのセレクションを揃え、大きな流れや変化とともに呼吸しています。


安西啓子(あんざい けいこ)
H.P.F, CHRISTOPHER
ストアマネージャー兼バイヤー