いつものリズムで創る時間


La Soufflerie | ラ・スフルリー





セバスチャンとヴァレンティナは、パリにふたつのアトリエを持っています。「どちらのアトリエも、小さくて温もりのある、居心地のいい場所です。木造の納屋のようなアトリエと、もうひとつ小さいのは、床と大理石の作業台があることで、真っ白です。そこには、すべての道具と、私達が20年の間に制作した、あらゆる種類のものが置いてあります。その道具全部と、作ったときのことや経験を物語る試作品の全てが、私達のお気に入りで、大切なものです」大きさも素材も様々な道具は、よく使い込まれ、手入れがゆきとどいています。うっすらと埃を被ったものも、まだ新しい試作品も、そこになければならない、アトリエの一部です。「ここでの時間全てを、制作に費やします。それは、私のための時間です」セバスチャンは、真っ直ぐな眼差しで、静かに言いました。

セバスチャンとヴァレンティナは、二人の子供と共に、週末は田舎の家で過ごします。「私達の家は、自然の中にあって、山小屋のように、木で出来ています。天井がとても高いので、明るさが感じられる。とても落ち着いた空間で、気持ちいい。家を作る際に使った材料、木と漆喰のおかげです。ここには、ヴァレンティナの古いカメラと彼女の家族から譲り受けた素晴らしい家具のコレクションがあります。二人で集めているガラスに関する膨大な本のコレクションや、古いもののコレクションも置いています。そのなかでも、ここで一番気に入っているのは、冬のストーブ。冬の果樹園から枝を拾って来て、それをストーブにくべて部屋を暖める。それは、とてもいいものですよ」セバスチャンもヴァレンティナもとても穏やかで、気持ちよさそうです。「果物を収穫したり、散歩したり、どれもここならではの過ごし方ですが、家族揃っての夕食が、ここでの私達のための時間です」二人でにっこりと、微笑み合います。

パリで過ごす時間と田舎で過ごす時間に、リズムの違いを感じないと言います。「私達に必要なのは、週に一日田舎に行くことと、他の日はよく働くこと。これは私達にとって、とてもいいリズムです」クリエイターとして、パートナーとして、親として、少なくとも3つの役目を担いながら、毎日を過ごす二人。

「タイヤをひとつ無くしたら、自動車は走らないでしょ。それと同じで、どれかひとつかけても、私達は進めません。この3つがあるおかげで、幸せな日々を暮らしています。3つの役目を持てることに満足しているし、成長しています。これが上手くいくコツですね」

この5月下旬から6月にかけて、4年ぶりに日本を訪れたセバスチャンとヴァレンティナ。「初めて日本へ行ったときは、東京で仕事しました。今回は、東京以外に、福岡と神戸にも滞在し、多くの異なる人々に出会い、一緒に仕事をしました。そして、それぞれの町で受けた温かいもてなしに、驚かされました。日本人は、招待した人をもてなすために自分の時間を使い、約束を守る。

私達は、その美徳に感動しています」そういう二人の目下の関心事は、「仕事の質、新しいカタチの制作を続けていくこと。吹きガラス職人を絶やさないために、若い担い手を鍛えること。その次は、パリにお店を開くこと」いつものように、いつものリズムで、二人は今日も楽しんでいます。
(聞き手:髙浦敬子)



写真:Anjeanette Massey


ラ・スフルリー
パリに工房を構える手吹きグラス・ブランド。デザインを手掛けるのは、アーティストのSébastien(セバスチャン)。彼の作品には、オリジナルのデザインの他、フランスで昔から愛用されてきた陶器などの「形」に着目し、その素材をガラスに置き換えたコレクションがあるのも特徴の一つ。全てが1点ものといえる唯一無二の美しいコレクション。

代表取扱店舗:H.P.DECOH.P.DECO 好奇心の小部屋アッシュペーブチック