原石に出会う


益子 杏子





WALLはオリジナリティのある国内ブランドを50ブランドほど扱っている。WALLは、2018年2月に10周年を迎え、その中でも、MIKIOSAKABE、JennyFaxは、お客様に支持され続けているブランド。MIKIOSAKABEのデザイナーの坂部三樹郎(以下ミキオさん)は、常に時代の先読みをし、時代感を捉え、洋服そのものだけでなく、洋服と人との関わりを追求し続けている。また、若手の育成も熱心で、新しい服やデザインだけでなく、新しい仕組み作れるファッションデザイナーを生み出す場にしたいと「me」という学校をつくり、「何がやりたいの?」というところから、考え実行する力を養う場になっている。

未来を生きるデザイナー


私から見るミキオさんは、この「何がやりたいの?」「これをやりたい」にとても純粋で、まっすぐで、それをやり遂げるために、多業種の様々な人々を、年齢、性別関係なくポジティブに巻き込み、チームをつくり、そのプロジェクトを作り上げていき、カタチにするパワーがピカイチであると感じる。そしてそこに関わる人間がみんな楽しく仕事をしている。ここ1年でミキオさんは、「GIDDY UP」というスニーカーのプロジェクトを立ち上げた。

このスニーカーは、「靴を通じて、地球と人間のコミュニケーションを新しい形にする」をブランドコンセプトに、透明度の高いソールで、身体そのものが浮いたような感覚にすることなど様々なアプローチで重力の関係に心地よい変化を与えるデザイン。アウトソールをジュエリーに見立てた“履くジュエリー”として、特徴あるデザインは新たな価値を生み出している。このやりたいことに集中し、つくりあげていく過程を近くで見させてもらっていると、自分もWALLで表現したいことは何だろう?WALLでやりたいことは何だろう?と常に考えさせられる。

ミキオさんだけでなく、ものを創り出すデザイナーたちは、未来を生きている。何がやりたい、何をつくりたい、この気持ちが一番のクリエイションの源。そこに純粋であればあるほど困難も大きいが、それを乗り越えたときに、私達に「なにこれ!?すごい!こんなの見たことない!素敵!」
「わ~これ着てみたい!」といった感動をもたらすものを創り上げてくる。未来と想像をいつも越えてくる。

そして、台湾出身のシュエ・ジェンファン(以下ジェンファン)がデザイナーのブランドJennyFaxは、“普通の女の子”の味方であるブランド。普通の女の子こそ、自分の殻を破りにくい。そんなときに、JennyFaxは勇気を後押ししてくれる洋服である。誰もが私は普通だと思っていても、時には女の子は、大胆な行動に出る、出たいときがある。その本質的なところをくすぐってくる。また、ジェンファンは、思い出や記憶の中から洋服のインスピレーションが湧き出ることが多く、それは女の子特有というか、女の子は、子どもの頃の記憶や、家族との思い出、誰かに言われた言葉とともに、周りの風景や、そのときの空気、匂いなど細かく憶えている生きもの。その思い出は楽しいだけでなく、イタイ想いもともなう。そのイタイ想いを洋服のクリエイションに表現するので、ジェンファンの服はいつもそこに心つかまれてしまう。それは年齢幅広く、JennyFaxの洋服を愛する女の子たちがいることが証明している。また、台湾出身であり、ヨーロッパで洋服づくりを学んだからこそ、アジアと西洋のミックス感、懐かしさと新しさのミックス感が絶妙で、そこに加わる大胆なデザインは唯一無二のブランドである。ジェンファンと私は同い年のため、公私ともにいろんな話をする。そしてジェンファンは、いつも寄り添ってくれて、的確なアドバイスや、“えッ!?今!?”というようなドキッとする行動は、私自身の心を動かし強くしてくれる。

こうやって、私やWALLは、ブランドやデザイナーに未来を感じ、心動かされ、生かされていると日々感じる。ファッションの楽しさは、未来を感じ、ドキドキとワクワクがそこにある。そして店はそのブランドを生かしたいという想いでそれらを表現し伝えている。私はそうやって未来を感じる原石にこれからも出会っていきたいし、ブランドとともに生きていきたい。

益子 杏子(ましこ きょうこ)
WALL ディレクター兼バイヤー