画一化なんて嫌!


STEFANO POLETTI | ステファノ・ポレッティ





近年テクノロジーが発展して、社会に変化をもたらしたけれど、それを本当に私達は望んでいたんだろうか?と考えることがあります。

テクノロジー自体も、その進化もいいんです。でも、例えば、インフルエンサーってありますよね。あれって本当に私はひどく怖ろしいものだと思うんですよ。どうして人のインフルエンス(影響)を受けたいんだ!?って不思議でしょうがないんです。私は絶対人の影響を受けて自分の何かを決めたりしたくないですから。

そう、皆もっと自分の頭を使って考え、自分で判断しなくてはいけない。基本的に私達の豊かさというものは「Individualité(個人性=一人一人が皆違うこと)」にあると思うんです。だから L’uniformisation(画一化)なんて絶対ごめんですね。豊かさの一番に心の豊かさがあると思うんですが、それを各自が自分のセンシビリティー(感受性)を持って伝えていくべきだと考えます。
私が自分の責任下でこういうビジューを作る仕事を一人でやると決めたのも一つの選択です。「自由」は自分の中で絶対的な要素なんです。ま、残念ながらお金持ちにはならないかもしれないけど、しょうがない(笑)
ベラッジオ(イタリア・コモ湖畔で家族のセカンドハウスがある場所)や、週末に(パートナーの)田舎の家に行くのも、その時間が非常に自分にとって重要だからです。それは自分の精神状態に影響するし、もしかしたら心の在り方そのものかもしれない…。
ある意味、ビジューを作ることを選んだのも、自分の人生を生きる上での選択の一つだったと思います。どこかの大企業でプレッシャーを感じながら社員間の人間関係のはざまでお金(利益)を追いかけることはできなかったと思います。では私の満足がどこにあるかと言えば、それは自分が作ったビジューが評価されている時ですね。おそらく俳優と同じで、名声とはまた別だけど、舞台での演技が喝采された時とかに似てるんじゃないかな。そして、ビジューを通して「エモーション」を人との関係にもたらすことができたら幸せですね。

伝えたいエモーション


日本に初めて行った時のことを今も思い出します。皆(日本の人達)自分の創作背景とか全てをすぐ分かってくれて、まるでシンフォニーを奏でるかのようでした。自分のやっていることの根幹を理解してもらえたことに感動して目がうるうるして泣きそうでしたよ(照れ笑)自分がクリエイションをスタートして30年以上経った今、一応こうして存在しているということは、きっとやっていることに意義があったんだと、やってきたことは正しかったと思えるようになりました。
とにかく一つはっきり言えるのは、「エモーション」が重要だということです。アーティストとは、もしその人が真摯なアーティストだったら、そこに伝えたいエモーションが宿ると思うんです。自分もただビーズをつなぐんじゃなくて、エモーションに満ちたビジューを届けられたらなと願ってきました。私のクリエイションのビジョンはとても自然に近いところにありますが、自分の核となる重要な要素です。それは自分の生き方でもあるかもしれません。

人が手を使ってものを作る「技」はとてもスペシャルなものです。自分もそうだし、ベニスのガラス職人達のためにも、L’uniformisation(画一化)と闘わなくてはという思いになるんです。制作過程でのちょっとしたアクシデントが起きるのも、ユニーク・ピース(1点もの)の価値があり、他と違う一つの個性になるのですから。
それからもうひとつ、私は時の流れを感じるのが好きです。花が枯れて死んでしまうまでの過程を見て、そこに流れる時間を感じ取る。自分の扱うミラー素材が酸化していくのを見る。「ボタニキュス」の作品もとてもシンプルだけど、そこに自然のはかなさを感じることができる。beauté(美)って移りゆく時の中での変化の中にも存在するんじゃないかなと思います。それは人も同じで、ボトックスをする人もいるけど、人の顔に時の流れを感じるのはとっても素敵なのに。イタリア女優のアンナ・マリアーニが言ったんですよ。「時がもたらしたメリットを奪わないで、それが私の歴史なんだから」って。



インダストリアルなエステティック(美観)には内面の美しさが欠けています。どんなにバービー人形みたいに表層的な美しさを得ることはできても、内面の美しさはお金では買えないですから。経験も同様です。教養や教育も重要です。
だから、話は戻りますが、インフルエンサーはインフルエンスを与えることでお金を稼ぎ、そこに企業も加担しているけれど、人はもっと自分の頭で考え判断することが必要だと思うんです。政治界では、人の無知やインフルエンスを受けやすい人がマスでいた方が統治しやすいのかもしれないけれど…。もう一度自分の心で感じるエモーションを!

日本の皆さんが自分の作品を買ってくれていたとしたら、皆自分自身ではどう表現していいかわからないかもしれないけれど、きっとその人もアーティスティックな面を持っているんだと思いますよ。うん、そこにはアートを感じる魂が間違いなくありますね。

(聞き手:花岡香織)


ステファノ・ポレッティ
パリ在住のイタリア人クリエイター。1995年にブランドを創立しオート・クチュール・メゾンとの仕事を始める。1998年に発表した作品“Bot anucus(ボタニキュス)”により広く認知され、世界中の美術館で展示されることとなった。現在はビジューの創作のみならずコラボレーションによるテーブル・アートの制作や空間演出、映画界など様々な分野で活躍している。

代表取扱店舗:記憶 H.P.FRANCEH.P.FRANCE BoutiqueH.P.FRANCE BIJOUX