フランソワーズとの約束


高浦 敬子




それまで見たこともないような、フランスのアクセサリー小物をバイイングし、H.P.FRANCEBoutiqueにディスプレイしながら、スタッフと一緒にお客様へ紹介していたフランソワーズ。彼女自身もまた、それまで会ったことのない特別な感性の人です。『ボンジュール フランソワーズ』(2014年に発行されたマダム・フランソワーズ・セーグル・キャロルの物語)にあるように、彼女の描くブティックのカタチを求め、徹底してスタッフを指導しました。
私達の仕事は、ブティックを訪れたお客様に、ものを紹介するというより、フランス流モードの楽しみ方を味わっていただくことですから、そこで働くスタッフは、フランソワーズの考えるエレガンスの基本を身に着けていることが、肝心です。そのためにフランソワーズは、ブティックに出勤してきた、一人ひとりの服装とアクセサリーのコーディネイトを確認します。サイズの合わない靴を履いていれば、それも指摘します。彼女に理解できない装いは、スタッフに理由を聞き、なぜ好ましくないのか、説明します。また、お客様を対応するスタッフを見ながら、彼女のアイディアと異なる提案を見かけると、お客様へ声をかけながら、スタッフにもよく見ているように伝え、その方にお似合いになるものを提案しコーディネイトします。
特に重視しているディスプレイを通して、色合わせ、大きさのバランス、素材の合わせ方などを伝え、作品に対する知識を深めるために、扱い方や見せ方をスタッフに説明します。ディスプレイを戻せないスタッフを見かけると、顔を真っ赤にして真剣に怒りますし、アクセサリーのグループ分け、バッグや帽子のクッション材の入れ方が間違っていても同様です。最初は知らないために気にならなかったことが、何度も怒られるうちに、そうではなくなります。フランソワーズは、こうしたことを繰り返していくことで、エレガンスに対するスタッフの理解を深め、彼女と同じようにお客様へお伝えすることを望みました。

真のエレガンス


クリエイションについては、言葉で説明できることと、そうでないことがあります。フランソワーズは、スタッフの理解の度合いを、作品に触れる回数で判断します。ディスプレイされていない、またディスプレイされていても、お客様に提案されない作品を見つけると、最も目立つ場所へディスプレイします。そうしてスタッフに、心を開いて、よく見て、何度も触れるように言います。H.P.FRANCE Boutiqueにならぶ作品は、一般的に知られているブランドとは異なる表現のものですから、クリエイションがより身近に感じられるように、スタッフに意識して接することを促します。こうして、フランソワーズのディスプレイから真のエレガンスを学び、スティリストの作品と制作の背景を知ることで、クリエイティヴでオリジナリティあふれる世界を実感するようになります。クリエイションを心で見る目が養われるにつれて、H.P.FRANCE Boutiqueは進化し、私達の四半世紀に渡る挑戦の中で、幸運にも出会えたお客様が寄せてくださる信頼は、私達が進み続ける勇気となり、ある種アーティストであり、新しいモードの世界を作るスティリストにとっては、オリジナリティとクリエイティヴをさらに追求するものづくりの自信につながっています。お客様とスティリスト、そしてスタッフの、クリエイションで結ばれる関係は、フランソワーズの描いたH.P.FRANCE Boutiqueのカタチです。

今日もH.P.FRANCE Boutiqueに、フランソワーズと仕事をしてきたスタッフは立っています。彼女達が、フランソワーズと一緒に過ごした時間からつかんだ、フランス流モードのエスプリとクリエイションの素晴らしさを、出会ったお客様にお伝えしています。そして、その場を目にする新しいスタッフも、同じようになるため、日々努力します。ひとつひとつ、丁寧に、たゆまずに、フランソワーズとの約束は、続いています。

髙浦 敬子(たかうら けいこ)
コンセプター