ショップ

ブランド

アーカイブ

この条件で並び替え
この条件で絞り込む
ショップを選択する
ショップ
ブランドを選択する
ブランド
2018.02.08
「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」

遠藤麻衣

遠藤麻衣さんは、東京藝術大学大学院博士課程に在籍するアーティスト。昨年秋にフェスティバル/トーキョー17という舞台芸術のフェスティバルで、「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」と題したパフォーマンスを行った。アーティストの村山悟郎さんと、自分たちの納得がいく結婚式をしたい、というところからはじまった、自由で、楽しそうな、あたらしい結婚宣言の儀式。観劇のつもりで出かけた観客は図らずも、2人の結婚式に参列することになった。

契約署名の儀

パ-ソナルな場でもありパブリックな場でもある、結婚式という場をまったく別な、自分たちだけの表現にもっていくというユニークな企画をたてた遠藤さんってどんなアーティスト? と、気になる方にまずみてほしいのが「うずらップ(♀)」。

この動画は、フェスティバル/トーキョー17の一貫として多くのスタッフの協力を得て製作された。作品のなかで遠藤さんは、RYOTAMURAKAMIの服をきて、うずらという最愛のペットにからめながら、現代的なフェミニストとしての姿勢を唄っている。

「2人のあいだで約束事をちゃんとしておいた方がいいと思うの。」(video, 2017)より

「うずらは、日本で唯一家畜化された動物と言われていて、産卵量がすごいんです。そして産んだ卵にはまったく目もくれません。人間の都合で自分たちの姿をかえられてしまい、人間がいないと生きていけないのに、うずらはうずらとしてノホホンと生きているんです。抑圧された制度反対! とプラカードを掲げることもしません。なんでこんなに自由なんだろう、と思うようになりました」


「アイ・アム・フェミニスト!」(installation view, Gallery Barco, 2015)

「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」を発表した遠藤さんは、「アイ・アム・フェミニスト!」というタイトルでもかつて、展覧会をしたことがある。

世の中に蔓延するフェミニストの様々なイメージを、ピカソの有名な絵画「泣く女」の女性に扮した遠藤さんが演じつつ泣いていく「泣く女」という作品は、フェミニストという既成概念を問うものだった。「フェミニストといっても、内実はとても複雑で多様。ですが、フェミニストというイメージは限定されたものです。昨年フェスティバル/トーキョー17で発表した「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」ではその複雑さを見せることも意図の一つでした。たとえばうずらに注目してみて、フェミニストとして生きるときに、うずら的なあり方ってないのかな? と考えてみることを、してみたかったんです。」

「泣く女」(video, 2015)

世間がよしとしてきたものを何も考えずに受け入れるのではなく、遊ぶように楽しみながら、自分の納得が行く生き方を模索したい。「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」のパフォーマンスのなかで「離名の儀」「うでかみの儀」「契約署名の儀」という三部構成の儀式を考えた背景には、そんな考えがあったのだろう。

「私たちは結婚して2年目なのですが、籍をいれてから夫が2年間ウィーンで制作していたので、別居婚が続いていました。結婚に至るきっかけも、彼のお母さんがご病気だから早く、結婚しておきたい、ということからだったんです。結婚して私は村山の姓に変わったのですが、あとから『なんでもっと話し合わなかったんだろう』と思うようになりました。これまで他人だった人が2人で一緒に生きていこうと、約束をする。それなら、そのことの内容をよく考えて、きちんと言葉にしてみたい、というところが、出発点でした」

うでかみの儀

2人が考えた結婚のあり方は、たとえば結婚にともなう改姓の問題であれば、3年間ずつ一方の姓を名乗るシステム。契約更新の前に一度離婚をして、再度結婚し直す、というものだ。このパフォーマンスに列席することができた私が思ったことは、村山悟郎さんの夫としての協力なくしては成立しえないことだったということだ。遠藤さんは言う。「『妻だけが改姓するなんてケシカラン!夫はもっとそこを理解すべき!』という口調では、夫のほうも変わろうとしなかったと思います。それよりも、『名前を変えて遊べる契約にしてみたら、楽しいんじゃない?』と言ってみたから、彼ものってきたんだと思います」
考えてみると、結婚というシステムがいつまでも永遠に変わらないというのも、不思議な話だ。どんなカップルであっても「これはどうなの?」ということを挙げていったら話題はつきないにちがいない。

離名の儀

離名の儀

「2人のあいだで約束事をちゃんとしておいた方がいいと思うの。」(video, 2017)より

かろやかに、今の視点でフェミニズムを語る遠藤麻衣さんは、来春から留学し、ウィーン美術アカデミーでの生活がはじまる。サイバーフェミニズムやポストコロニアル理論等の分野で博士号をもち、哲学者、芸術家として知られるマリーナ・グルジニッチのもとで学ぶというから、今後の発展も楽しみだ。ウィーンで遠藤さんがこれから何を考えていくのか、その報告をまっていたい。

「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」(installation view, Goethe Institut Tokyo, 2017)

ライター : 林 央子
-CREDIT-
撮影 : 藤川琢史、宮澤響、松尾宇人

遠藤 麻衣
えんどう・まい プロフィール
俳優、美術家。
1984年8月5日、兵庫県生まれ。現在、東京藝術大学美術研究科博士後期課程に在籍。
「演じる」というテーマを軸に、美術や演劇など領域横断的な活動を展開。プライベート・ライフにフィクションを入れ交ぜることによって抽象化し、作品として発表している。
主な発表に『アイ・アム・ノット・フェミニスト!』 (2017)、『MOTアニュアル2016 キセイノセイキ』(16)、『ボクは神の子を妊娠した。』(15)。また、主な出演にsons wo:『シティⅢ』(17) 、二十二会『へんなうごきサイファー』(14~)、岡崎藝術座『イスラ!イスラ!イスラ!』(16) 、西尾佳織『透明な隣人 ~8 -エイト-によせて~』(14)、岸井大輔『始末をかく』(13~18)など。
http://maiendo.net/
*この儀式が行われた後(の2018年1月)、遠藤さんは村山さんの申し立てを受け、婚姻契約の破棄を引き受けている。


Nakako Hayashi
Writer:Nakako Hayashi
林 央子
ライター / 編集者
1988年、資生堂に入社し『花椿』編集部に所属する。
1993年パリコレ取材を始め、『PURPLE PROSE』創刊号をポンピドゥセンター地下のブックショップで発見する。年に2回のコレクション取材を続けながら『PURLE』編集部のエレン・フライスと交流を深め、彼女の媒体に度々、寄稿。1990年代半ばから『DUNE』や『STUDIO VOICE』などにも執筆する。ガーリーカルチャーに興味を抱き、1996年渋谷パルコで開催されたソフィア・コッポラを軸とする5人の女性作家による「BABY GENERATION」展の企画に参加。ADにマイク・ミルズを招き、ホンマタカシ撮影によるカタログ『BABY GENERATION』を制作した。
資生堂を退社してフリーランスになった翌年、個人雑誌『here and there』を創刊(2002)。ADに、同時期にフリーランスになった服部一成を招いた。
2011年書籍『拡張するファッション』(スペースシャワーネットワーク)を上梓。
2014年には同書のタイトルを冠した『拡張するファッション』展のキュレーションに参加(水戸芸術館現代美術センター/丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)。
著書や編著に『BABY GENERATION』、『PARIS COLLECTION INDIVIDUALS 1・2』(リトル・モア)、『拡張するファッション』(スペースシャワーネットワーク)、『拡張するファッション ドキュメント』(DU BOOKS)、『SET PICTURES Behind the Scenes with Sofia Coppola』(DU BOOKS)がある。