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この人を見よ

Vol.4 重田なつき:ド派手で、激情。それでいて美しい人

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重田なつき:
ド派手で、激情。それでいて美しい人

UPDATE
2008.06.11

一見怖い。手で目を覆う仕草をしながらも、指の間から見てしまう。心は既に鷲づかみされている。いい子ちゃんはお帰りなさい。どピンク、縛り、おえぇぇぇ、ぶちゅう‥‥。帯や着物のキーワードにはなり得ないようなフレーズの連続。それが今の月影屋、重田なつきの世界観。 

  

2001年に始まった水金地火木土天冥海というプロジェクト。アッシュ・ペー・フランスが提案する日本をテーマにしたお店のバイヤーとなった私は、一体何を日本として、どの感覚を養い、どの方向へ向かうのか、何も定まっておらず、でもただ希望には満ちていた。そんな時、初めて重田さんとお会いした。

上下黒、簡単な、つまりは無駄のないシンプルなYOJI YAMAMOTOの服をまとい、黒い髪をルーズに束ね、お香のような、お座敷のような匂いのする人。目はその頃から、浮世絵の目をしていた。 「かわいい」といわずに、「美しい」と言った。

その人が大きな一枚の布に包んで運んできたのは、帯だった。

着物も、浴衣も、ない。彼女のコレクションは帯だけ。一定の巾でただ長いだけ、という帯の形を美しいと思い、製作を始めたと、後から聞いた。スパンコールが輝く帯、はっとするような色合いで差し込まれた古布やバティックの縞の帯、こんなものは、それまで見たことがなかったし、水金が探している日本だと直感した。

そのモノ自体の美しさもあるけれど、重田さん本人が、日本だと感じた。心理学を学んでいた自分にとって、バイヤーとして出会った最初のアーティストへの切り口はモノではなく、重田さんの人格だったんだと思う。

だからよく一緒にお酒を飲んだ。肴は、重田さんの話。大学の卒業制作にした一つも窓のない建築プランの話や、旅の話。マリア・カラスの話。九鬼周造著『「いき」の構造』について。どんなに難解に絡んでいても答えが導き出せる数学が美しい、と言ったし、美しい男たちが低い確率の中、針に糸を通すが如くパスを通してゴールを決めるサッカーも美しい!と雄叫びをあげたりした。

こんな会話の中で密かに、重田さんがなにを「美しい」と感じるかが、私にとっての美意識となって蓄積されていった。

印象的なエピソードがある。ある空港で、重田さんのトランクが行方知れずとなり、結局彼女はそのままイタリアを旅することとなった。その時の彼女の持ち物は、お財布とパスポートと、ブランケットにしていた一枚の大きな布くらい。一枚の布。レストランではそれをショールにして、ビーチではラグにして、移動するときは端を結んでバッグにして過ごした。つまりは、一枚の布で充分だったと。無駄を削ぎ落とした快適さを得た体験。それが重田さんに一枚の布を掘り下げさせるきっかけになったのだと聞いた。

どの話も刺激的で、触発された私は本気で旅に出ようと思った。パリ、スペイン、上海、インド、カンボジア、ネパール。あれから私もずいぶん旅をしてみたけれど、どの旅においても、いつも私は無駄を持っているように思うし、旅をする度、気持ちは日本へは向かわず、アジアに向かった。自分という民族性にフィットしたから。やはり旅は十人十色で、同じにはなりえない。

これが、重田さんとの出会いがもたらしたもの。そして今、月影屋は私の想像を超え、重田さんの中に在った激情が進化した、どピンク・ヒップでディープな境地を作り上げている。

そんなめくるめく世界に、少々おっかなびっくりしながらも、水金は錆びたものを織り交ぜ、日本の懐かしいものやルーツを探し続けている。

求める理想が違うけれど、今年再び出会い、水金地火木土天冥海のお店にて月影屋展を開催。「艶の浴衣」を提案している。

九鬼周造氏の云う「永遠に動きつつ永遠に交わらざる平行線・・・・縞が『いき』とみなされる」。月影屋と水金の交わることのない平行線は、いつか「いき」の関係になりうるのだろうか?



Writer Profile:
土村真美(つちむら まさみ)
1977年生まれ、金沢大学修士課程修了。2001年アッシュ・ペー・フランス入社。水金地火木土天冥海バイヤーとしてバイイング、ディレクションともに担当。
Photo
Hanayuki Higashi
Models
L to R:Natsuki Shigeta, Masami Tsuchimura
PROFILE
重田なつき(しげた なつき)
月影屋店主。1971年生まれ、日本大学理工学部建築学科卒。「一定の巾でただ長いだけ」という帯の形を美しいと思い制作を始める。2001年より月影屋として作品を発表。デザイン、制作の他、雑誌や映画関連で着物のスタイリングも手がける。
月影屋 細下駄影屋 創作帯と浴衣
  • 右:月影屋 細下駄
  • 左:月影屋 創作帯と浴衣
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