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時間も距離も超越してしまう、
憧れのデザイナーとの“日常”

- 2008.04.21
約10年前、学生時代をイギリスで過ごしたことがあります。英文の劇作家研究だとか異文化間コミュニケーションを勉強するとか何とか言って、その頃触発されたロンドン・カルチャーのヴィヴィアン・ウェストウッド、PPQ、Antoni&Alisonや、『トレインスポッティング』にOASIS、アシッド・ジャズ、Tomato、それからロンドンブーツにミニスカートを穿いていた若かりし頃の母の写真から影響を受けて、Swingin’ London、デヴィッド・ボウイやT-REX、そんな貧弱なイメージだけを背負って飛び込んでいきました。ファッションが大好き、楽しいことが大好きというのは今も変わらないのですが、当時はそのベースしかなかった私。買った洋服や新しく出来たお友達、大好きになった場所を写真に収めるのが日記代わり。どのお店で出逢ったかも覚えていないのですが、その中の一枚には、HERCHCOVITCH;ALEXANDREの黒のワンピースが写っています。この時が衝撃的な出会いだったわけではなく、彼の才能の虜となるのは、アッシュ・ペー・フランスで働くこととなった、約4年前に遡ります。
今は中目黒の再開発でなくなってしまった(と思う)のですが、当時大好きだった「LOBBY」というお店でHERCHCOVITCH;ALEXANDREのお洋服と再会しました。ブラジリアン・デザイナーとして既にファッション誌のニュースを騒がし始めていたことと、不思議な名前だったので、買ったことがあるブランドだというのはすぐに思い出せました。そして、試着した瞬間、インポートなのになぜかしっくりくるサイズ感と、カラーや素材の他では見たことのない組み合わせに大ファンになってしまいました。ワンピース、コート、シャツと私にしたら随分と大人買いをしたものです。そしてその後すぐに、アルゼンチン・デザイナーのPRを担当していたのが縁でサンパウロ・ファッションウイークに招待して頂き、憧れのアレキサンドレ・ヘルコビッチさんと初対面を果たしました。
デザイナーのファッション・ショウを見てさらに夢中になり、直接彼の活動の色々を聞き、尊敬するこの人と働きたいという具体的な目標や夢が明確になったのは、この時の出会いが大きいことは間違いありません。普通は若い頃って、「これがあるから頑張れる」とか「何を目当てに生きていくのか」「それってどうすれば見つかるの?」というような悩みをもっていて、私もちょうど友人からそんな話をよく聞いていた時期でした。ところが、私ときたら好きなものに囲まれているだけで幸せだったので、目標が出来て初めて、自分の未熟さや世間の厳しさが見えてきて、そのギャップに苦しみ焦りました。でも、彼と毎日12時間の時差もなんのその、メールや電話をメインに一緒に働くうちに、焦りなどすぐになくなりました。彼のファッションからも見られるように、寛容性が高く、自由で、斜めに構えずにものを見る姿勢は、一番若い、一番遠い国の新しいパートナーの一人になった私に対しても同じだったのです。
「言葉は、一つの単語だけでも、何度も直接話せば伝わるから。恐れずにゆっくり話して」と私の意見を丁寧に聞いてくれたり、面白い写真が撮れたと写真を送ってくれたり、最近気に入っているアーティストの情報を送ってくれたりと、アタッシュ・ド・プレスにとって不可欠なデザイナーの世界観を日常の中でさりげなく伝えてくれました。彼の名前を冠にしたコラボレーション商品やプロジェクトは今や約160社ともなり、ビジネスマンの顔も持つ彼なのに、コンタクトのマメさにはアタッシュ・ド・プレスとして逆に本当に頭が下がります。今では、私もPR01.の海外クライアント担当として、彼と同じくらいの頻度で毎月国境を越えて動き回っていますが、お互いがどこにいても働けるというスタンスも教えてもらった気がします。
アッシュ・ペー・フランスという土の中の、私という小さな種に、光や水を与え小さな苗になるよう刺激をくれた一番の存在は彼です。今は小さな苗木の私が樹木となる日には、彼はどんなサプライズという刺激をくれるのでしょうか‥‥。想像もつかないほどチャレンジャーである彼との日常=仕事は、1ミリたりとも疎かにすることはできないと、私は、今日も彼にメールを送るのです。
- Writer Profile:
- 長井美樹(ながい みき)
PR01.インターナショナルDiv. アカウントディレクター。1月のサンパウロ・ファッションウィークを皮切りに、NY、パリ、ロンドン等の主要なコレクション以外に、今年はマドリードなど世界各国のコレクションを廻る。その活動は、H.P.FRANCEウェブサイトのSTAFF BLOGで更新中。 - Photo
- Hanayuki Higashi
- Hair&Makeup
- KODUE(for come http://www.comeandpeace.com/ )

- ALEXANDRE HERCHCOVITCH
(アレキサンドレ・ヘルコビッチ)
ブラジル、サンパウロ生まれ。母親の影響もあり、小さい頃からファッションに関心が高く、一度は自らユダヤ教の学校に進学したが、大学でファッションを専攻。当時、自分が着ていた服がクラブシーンで人気となり、友達に洋服をオーダーされたことが、彼のデザイナーとしてのスタート。サンパウロ、ロンドン、パリ・コレクションを経て、現在はサンパウロとNYで発表。サンパウロを拠点にグローバルに活動し続けている。


- 右:2008SS メンズ・コレクション
- 左:2008SS レディース・コレクション


